2023.05.01
1. ヘルパンギーナ とはこんな病気
2. ヘルパンギーナ の原因と症状
3. ヘルパンギーナ の検査でわかること
4. ヘルパンギーナ の治療法と薬
5. ヘルパンギーナ のホームケアと予防
感染経路は感染者からの飛沫感染や、水疱(水ぶくれ)の内容物が付いた手で口を触るなどしたことによる接触感染です。
特異的な治療法はなく、発熱や痛みを抑える対症療法で、1週間ほどすれば治ります1) 。
原因は、コクサッキーウイルスやエコーウイルスなどのウイルスです。
中でもコクサッキーA群ウイルスが多いとされます1) 。
毎年5月ころから流行し始め、7月ころにピークになります1)。
感染者の年齢を見ると、1歳が最も多くその後は成長するにつれて減っていく傾向があります1) 。
のどの痛みで嚥下(えんげ:咀しゃくして飲み込むこと)が困難になることもあります。
水疱は自然に破れ、その部分が「潰瘍(かいよう)」となって、痛みます。
発熱に伴って📖熱性けいれんを起こすことがあります。
熱は2~4日程度で下がり、粘膜の症状を含め、1週間ほどで治ります1) 。
まれですが、重い合併症として、脳や脊髄を包む髄膜(ずいまく)に炎症が起こる「📖無菌性髄膜炎」や、心臓の筋肉の炎症である「心筋炎」が起こることがあります。
例えば、頭痛や嘔吐がある時は医師に相談しましょう。
ヘルパンギーナと似た症状に、同じ時期に流行する手足口病があります。
ヘルパンギーナは38℃以上の高熱なのに対し、手足口病はあまり発熱することはなく、38℃以下であることが多いです。
また、水疱の場所に大きな違いがあります。
ヘルパンギーナは口の中だけに水疱ができるのに対し、手足口病は口の中に加え、手足にも同じような水疱がみられ全身に発疹がでることが特徴です。2)
通常、ヘルパンギーナに絞った検査は行われず、症状をもとに医師が診断します。
診断がつきにくい場合は、患者の口の中の粘膜をぬぐった液にウイルスやそのかけらが含まれているかどうかを調べる検査などを行うことがあります。
熱や痛みの程度に応じて、症状を鎮める対症療法(📖解熱鎮痛薬・アセトアミノフェンの内服など)が行われます。
のどや口の中の痛みが強くて食事や水分が十分にとれず、脱水になっている時は点滴が必要なこともあります。
ヘルパンギーナの原因ウイルスの活動を抑える抗ウイルス薬はありません。
軟らかいもの、味が薄いものなど、口内の粘膜に優しいメニューがよいでしょう。脱水を防ぐため、水分はこまめに補給します。
ヘルパンギーナのワクチンはありませんので、予防のため、流行期には手洗い、手指の消毒、うがいなどを心がけましょう。
また回復後も2 ~4週間の長期にわたり便からウイルスが排出1) されるため、子どものおむつを交換した時などは、石けんでよく手を洗うようにします。
保育園・幼稚園にいつから通園してよいかについて、統一された基準はなく、自治体や園ごとに異なるようです。
大まかな目安は、「発熱や水疱がある期間はおうちにいる」ことです3) 。
1) 国立感染症研究所ウェブサイト(2023年1月閲覧:ヘルパンギーナとは (niid.go.jp))
2) 東京都福祉保健局「東京都感染症マニュアル2018」五類感染症(定点把握)P306(2023年1月閲覧:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/kansen-manual_2018.html)
3) 日本学校保健会.学校において予防すべき感染症の解説(2023年1月閲覧:https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H290100/index_h5.html)
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。
小児科専門医、小児神経専門医。
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