【医師監修】 巨大児 4,000g以上の赤ちゃんになる原因や症状、『水頭症』との違いは?

2023.03.13

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巨大児はどのくらいの大きさ? 【監修】井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

生まれたときの体重が4,000g以上の赤ちゃんを巨大児といいます。

赤ちゃんの体が大きいと、分娩時に難産になる可能性が高くなります。
妊婦健診で赤ちゃんの体重を計測しますが、健診の際の計測は「長さ」から推定した体重で誤差がかなりあることがわかっています。
また赤ちゃんが大きい場合は誤差も広がりますので、推定体重で巨大児が疑われたとしても、それだけで難産になると決まったわけではありません。
生まれてみたら推定と大きくずれて正常範囲だった、なんていうことも少なくありません。

それでも、もし推定体重が4,000gを超えるようであれば、巨大児の分娩になることを念頭に置いて分娩方針を考える必要があります。

巨大児になる原因は?

巨大児の原因は、遺伝によるものと子宮内の環境によるものがあります。

遺伝的な原因としては、お母さんやお父さんの体格が大きい場合です。
また、妊娠前に肥満だった場合や、巨大児を生んだ既往がある場合もリスクが高いです。
子宮内の環境が原因になる場合としては、お母さんが糖尿病(とうにょうびょう)や妊娠糖尿病(にんしんとうにょうびょう)で、しかも血糖値のコントロールが悪い場合です。
妊娠中からお母さんの高血糖が赤ちゃんに移行し、赤ちゃんの成長が促進され巨大児になることがあります。
この場合、出生後すぐに赤ちゃんに低血糖症状が起きてしまうことがあり、命の危険もあります。
また、妊娠中の過剰な体重増加もリスクが高くなります。
 

巨大児になるとリスクはある?

巨大児の出産は難産になりやすく、母子ともにさまざまなリスクがあります。

 

・肩甲難産(けんこうなんざん)

赤ちゃんの頭が娩出された後、肩の部分がお母さんの恥骨に引っ掛かってしまうことを肩甲難産といいます。肩甲難産になると、分娩が長引き赤ちゃんの胎児機能不全(たいじきのうふぜん)や新生児仮死(しんせいじかし)、脳性麻痺(のうせいまひ)などを引き起こす恐れがあります。また牽引する際に、赤ちゃんの腕や鎖骨に骨折や麻痺が生じることもあります。

 

・子宮や会陰の裂傷

赤ちゃんが大きいため、分娩時に頸管(けいかん=子宮の出口)や会陰に裂傷ができやすくなり、直腸や肛門括約筋が断裂してしまうこともあります。

 

・弛緩出血(しかんしゅっけつ)

巨大児の妊娠は子宮が大きく膨らむため、分娩後の子宮の収縮機能が不十分になり大量に出血することがあります。これを弛緩出血といい、出血性ショックを起こしてお母さんが危険な状態になることもあります。

 

・緊急帝王切開(きんきゅうていおうせっかい)

肩甲難産などにより経腟分娩が難しいと判断されると、緊急に帝王切開に切り替えることがあります。

 

・低血糖(ていけっとう)や低カルシウム血症(ていかるしうむけっしょう)

お母さんが糖尿病や妊娠糖尿病の場合、おなかの赤ちゃんは自分でインスリンを多量に分泌することで血糖を調節しています。出生後もその状態が続くために、赤ちゃんが低血糖や低カルシウム血症になる可能性が高くなります。

巨大児の予防と出産

巨大児のリスクを予防するためには、肥満と高血糖に注意することが大事です。

特に、お母さんが糖尿病や妊娠糖尿病の場合は、医師の指示に従って食事療法やインスリン注射を行い、血糖値をコントロールする必要があります。
おなかの赤ちゃんの体重は胎児超音波によって推定されます。
予防に努めても赤ちゃんの体重が増え巨大児が予測される場合は、予定日よりも早く誘発分娩(ゆうはつぶんべん)を行ったり、予定帝王切開を行ったりする場合もあります。
医師と話し合って十分に納得した上で、よりよい分娩方法を選択しましょう。

水頭症(すいとうしょう)はどんな症状?

妊婦健診で赤ちゃんの推定体重を計測するとき、頭の横径(大横径)を測定します。

この大横径が大きい場合、巨大児の可能性もありますが、胎児水頭症でないかどうかを必ず確認します。
脳には脳室(のうしつ)と呼ばれる空洞があり、そこで作られる脳脊髄液(のうせきずいえき)という透明な液体が脳室から脳へ循環しています。
水頭症はこの脳脊髄液の循環がうまくいかず、脳室に脳脊髄液が過剰にたまった状態です。
水頭症の原因はさまざまですが、分娩後の赤ちゃんの場合には、脳室内出血、髄膜炎(ずいまくえん)などがあります。
また、お母さんのおなかの中にいるときに発症する胎児水頭症(たいじすいとうしょう)は、先天的な疾患や遺伝が原因になります。

 

水頭症の症状は?

水頭症は、すべての年齢で発症し、症状は年齢によって異なります。

水頭症になると、通常は脳室に脳脊髄液が過剰にたまることで脳が圧迫され、脳圧が上昇し症状が現れます。
しかし赤ちゃんは頭蓋骨がまだしっかりと結合していないので、最初の症状として多いのは、急に頭が大きくなることです。
また大泉門(だいせんもん)が張った状態になったり頭皮が薄くなって頭の血管が目立ったりします。
早期には他に目立った症状は起こりませんが、進行するにつれいろいろな症状が現れてきます。

 

《赤ちゃんの水頭症の主な症状》

・頭囲が急速に大きくなる
・大泉門が張ったり腫れたりする
・頭皮が薄くなり血管が目立つ
・嘔吐することが増える
・元気がなくなったり不機嫌になったりする
・食欲がなくなる
・両方の黒目が下まぶたの方向に下がる
・発達が遅れる

水頭症の診断と治療

水頭症の診断は、胎児水頭症の場合、妊娠中に出生前診断を受け、胎児超音波検査や胎児MRIを行います。

 

出生後の発症では、多くは乳児健診で頭囲が平均よりも非常に大きいことから専門医の診断やエコー検査を行って判明します。
幼児期になって大泉門が閉じている場合は、頭部CTや頭部MRIを行います。
水頭症を治療するためには、脳室の過剰な脳脊髄液を排出しなければなりません。

そこで一般的に行われるのが、脳室から腹腔(ふくくう)に通る管を体に埋め込み、その管を通して脳脊髄液を排出するシャント手術です。
また、胎児水頭症では、その原因となった先天的な病気の治療も必要です。

💡水頭症は、治療をせずに放置していると発達が停滞し、重篤な障害が残ったり、まれに生命に危険が及んだりすることもあります。
脳へのダメージを少しでも軽く抑えるには、早期に発見し、すぐに適切な治療を行うことが重要です。

《 監修 》

  • 井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

    よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。

     

    HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科

     

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