【出産・ 分娩 】赤ちゃんが出ないときやお産中の出産を助けるための医療処置【医師監修】

2022.12.15

2

iStock-1183380706

出産を助けるための医療処置について

日本の医療機関で出産の際、99%近くの割合で分娩時に赤ちゃんとお母さんの安全を守るためにさまざまな医療処置が行われています。
ここでは、赤ちゃんがなかなか出ないときに行われる出産をサポートする処置と、お産をスムーズに行うための一般的な医療処置をご紹介します。

分娩で赤ちゃんが出ないときの医療処置

子宮口が全開大(約10cm)になり赤ちゃんの頭が下りてきても、赤ちゃんの回旋異常(かいせんいじょう)やお母さんの疲労などのために、お産が進まなくなることがあります。
赤ちゃんが出られない状態が続くと母子共に危険になる可能性があるため、医療処置によって赤ちゃんが外に出るのを助けることがあります。
 

▼会陰切開(えいんせっかい)

膣と肛門の間とその周辺を会陰といいます。
赤ちゃんが外に出るためにはこの会陰が十分に伸びる必要がありますが、特に初産の場合は会陰の伸びが悪いことが多く、そのままだと赤ちゃんの頭がつかえたり、赤ちゃんが出る勢いで会陰が裂けたりすることがあります。
これらを防ぐために、あらかじめ会陰部をはさみで切るのが会陰切開です。
出産が終わるとすぐに切開した会陰を縫合します。
切開も縫合も麻酔をした上で行います。
抜糸は通常退院の前日か当日に行われますが、そのまま体に吸収される糸を使った場合は抜糸をしないこともあります。

 

▼子宮底圧迫法

本来ならお母さんの怒責(いきみ)による娩出力で産みたいのですが、疲労などで力が入らない場合や、赤ちゃんの心音が危険な兆候を示して少しでも早く分娩してしまいたい場合などに、お母さんのいきみに合わせて子宮底を圧迫することで娩出力をサポートすることがあります。
なるべくならやらずに済ませたい処置ですが状況に応じて行うことがあります。
鉗子分娩や吸引分娩では合わせて行うことが多いです。

 

▼鉗子分娩(かんしぶんべん)

分娩に使う鉗子は、中をくりぬいたスプーンのような形の金属製の器具ではさみのように2枚組み合わせて使います。
この鉗子を赤ちゃんの頭から下顎にかけて両側から挟み、お母さんのいきみに合わせて医師が赤ちゃんを外に誘導するのが鉗子分娩です。
鉗子分娩を行うと、赤ちゃんの頭や顔に鉗子の跡がつくことがありますが、多くは出産後数日で消えてしまいます。

 

▼吸引分娩(きゅういんぶんべん)

吸引分娩には、小さなお椀のような形をした金属やシリコン製の吸引カップを使用します。これを赤ちゃんの頭に密着させて機械などで中の空気を抜いて吸着させ、お母さんのいきみに合わせて、赤ちゃんを外に引き出します。
頭頂部が引っ張られることで、出産後、赤ちゃんの頭に小さなこぶができることがあります。多くは一時的なもので自然に治りますが、極めてまれに治りにくい血腫ができてしまうこともあります。

お産をスムーズに行うための医療処置

万一のトラブルに備えスムーズなお産を行うために、お産に先立って、あらかじめいくつかの医療処置が行われます。必ず行われる処置もありますし、施設によっては行わない処置もあります。
 

▼分娩監視装置

赤ちゃんの状態と子宮収縮の状態を把握するために、おなかにベルトをして2つのセンサーを装着します。
陣痛開始時から着けますが、特に問題がなければ外すこともあります。
分娩の際は、ずっと装着するのが一般的です。

 

▼点滴

お産では、たとえそれまでの経過が順調でも、大量出血などの緊急事態が発生することがあります。そこで、緊急時の血管確保のため、陣痛がある程度強くなってきた段階で点滴をする施設もあります。
輸液は主に生理食塩水や糖液などで、陣痛が弱いときはこの点滴から陣痛促進剤を投与することもありますが、基本的にはご家族への説明と同意を得てから薬剤の投与を行います。施設によっては、経過にかかわらず全例で点滴確保するところもあります。

 

▼剃毛

会陰切開をしたときや会陰裂傷を起こしたとき、消毒や縫合の処置がしやすいように、会陰の周りの一部の陰毛をそる処置を行う施設もありますが、WHO(世界保健機構)の推奨では不要とされており、行わない産院が多くなってきました。

 

▼浣腸

直腸に便がたまっていると、産道が便に押されて狭くなり、赤ちゃんの進行を妨げることがあります。
また、分娩時に便が出ることがあるので感染予防のためにも、産院によっては事前に浣腸を行うところもあります。

 

▼導尿

カテーテルという細い管を尿道に挿入して尿を取ることを導尿といいます。
膀胱に尿がたまると妨げとなって赤ちゃんが下がりにくくなることがあります。
そのため、陣痛が強くてトイレに行けない場合や、陣痛の痛みで尿意の感覚が鈍くなったときなど、必要に応じて導尿します。

出産を助けるための処置は、産院や医師の方針によって異なります。

出産を助けるための処置は、産院や医師の方針によって異なります。
会陰切開は必ずするのか、赤ちゃんが出にくいときには鉗子分娩と吸引分娩のどちらを行うのか、剃毛や浣腸などの処置はどこまで行うのかなど、疑問に思うことや不安なことは、早めに医師に相談しておきましょう。

2018年に提唱された「WHOガイドライン:ポジティブな出産体験のための分娩期ケア」は、ネットで日本語訳を無料で読むことができます。
専門的な部分がかなり多いので読むのは簡単ではありませんが、興味があれば目を通しておくことをお勧めします。
ただし、このガイドラインはあくまで「合併症がなく経過に問題のない妊婦さん」向けのものであり、何らかの合併症がある場合や緊急性の高い場合には当てはまりませんのでご注意ください。

出産において、どのような場合にどのような処置が行われるのかを知っておけば、一層安心してお産に臨むことができます。

《 監修 》

  • 井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

    よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。

    HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科

     

    【本サイトの記事について】
    本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます. Unauthorized copying prohibited.