2021.11.29
妊娠中の時短勤務について、会社として制度化している場合は、会社の規定に従うことになります。
では制度化されていない場合はどうなるのでしょうか。
「子育て中の時短勤務」と違い、妊娠中の時短勤務は、本人の希望があれば必ず行えるというものではありません。
妊娠中に法律で定められている制度について②でご紹介した「母性健康管理措置」の一環として、医師の判断に基づいて1時間程短縮した勤務を行うことが可能とされているにとどまります。
とはいえ、上司や人事労務部門へ相談することにより、制度がなくても配慮されることや、あなたの相談をきっかけに会社が制度化することも考えられますので、まずは相談しやすい社内の方に相談してみましょう。
時短勤務は、これまでより勤務時間が短縮される制度ですから、その短縮割合に応じて給与が減額されることが多いです。
時短勤務中も、時短勤務開始前と同様の給与を支払う会社もありますが、少ないでしょう。
まずは会社に時短勤務に変更した場合の給与を確認しましょう。
基本給以外に手当が支給されている場合は、その手当が時短勤務中も支給対象となるか、更には賞与にも影響があるか、なども確認しておくと家計への影響度を把握したうえでの検討が行えます。
通常の勤務時に、固定残業代(みなし残業)※が支給されている場合は注意が必要です。
固定残業代はあくまで「○時間分の残業代」として支給しているわけですから、基本的には残業がない前提で勤務する時短勤務において、固定残業代を一切支給しない場合が多いです。
特に違法なことではなく、手当の支給趣旨に照らせば、妥当な規定とも言えます。
ただし、固定残業代が出ないということは、時短勤務で、決められた時間以上の勤務をした場合には、超過分の残業代が支払われなくてはいけません。
時短勤務だからといって違法なルールを適用する会社もありますので、その点は気を付けましょう。
一方、社員の負担に配慮して、固定残業代を全額カットするのではなく、基本給と同じように勤務時間の短縮割合に応じて計算し支給する企業もあります。
この取扱いは、社員負担への配慮だけでなく、特に企画系の業務の方などは、必ずしも労働時間の長さが成果に結びつかないこともある為、固定残業代を含めた月額給与が、その方につけられた評価であるという考え方ともいえます。
給与や賞与だけでなく、休暇についても確認しましょう。有給休暇の日数が減少することはありませんが、半日単位の使用が認められるのか、有給休暇以外の休暇はこれまで通り使用できるのか、なども確認しておくと安心です。
産前産後休業に入る前に時短勤務を行った場合、給与が減額されることによって、出産手当金と育児休業給付の金額に影響がでる場合があります。
どちらとも、産休や育休に入る前の一定期間の報酬額をもとに金額が算定されるため、フルタイムで勤務を続けた場合より少なくなる可能性があります。
また、育児中の報酬減額を対象とした養育期間特例も対象外となります。
産休前の時短勤務は給与額や公的な給付が減少してしまう可能性が高いですが、ご自身と胎児の健康が最優先となりますので、無理をしない働き方をしましょう。
《 監修 》
木幡 徹(こはた とおる) 社会保険労務士
1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。ベンチャーでのIPO準備を経て、現在はM&Aに積極的な上場企業に在籍。企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。
▶HP https://fe-labor-research.com/