【産休・育休明け】働き方「所定外労働の制限」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」について【社労士監修】

2022.04.25

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おでかけ

育児休業明けの働き方で、残業や深夜業を減らすことはできる?

今回の記事では、育児休業明けに『時短勤務以外に制限することができる働き方』についてご紹介します。
時短勤務についてはこちら(育児休業明けの勤務時間の変更:時短勤務について)をご参照ください。
 
家事と育児に加え、仕事が始まると、それまでの生活のリズムが大きく変わります。
小さな子どもを育てながらの、残業や深夜勤務は厳しい…といった方も多いと思います。
そんな時職場に申し出ることができるのが、『残業の制限』と『深夜業の制限』についてです。

3つの制限を申し出ることが出きます

小さな子どもがいる方は、その年齢に応じて「所定外労働の制限」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」を申し出ることができます。
 
妊娠中の時間外労働・休日労働・深夜業の制限(妊娠中の働き方:妊娠中に法律で定められている制度について①)と同様に、会社がこの申し出を拒むことはできません。

 

法律上、「事業の正常な運営を妨げる場合」は申し出を拒むことができる旨の記載がありますが、代替人員の有無等を含めての客観的な判断となりますので、単に繁忙というだけではこの要件を満たしません。
 
基本的には、申し出が認められると考えて問題ないでしょう。
パート・アルバイトなどの有期雇用者も対象です(日雇いの方は対象外)。
この3つの制限を詳しく見ていきましょう。

所定外労働の制限(残業免除)

3歳未満の子どもがいる方は、「所定外労働の制限」を申し出ることが可能です。
この「所定外労働」ですが、いわゆる「残業」と考えていただいて問題ありません。
子が3歳未満の期間であれば、何回でも利用することが可能です。社内の規定に基づき申請書などを提出します。
例えば1日の労働時間が9時~17時30分(休憩1時間)と定められている場合、その時間帯以外の勤務を「所定外労働」といいます。フレックスタイム制の場合は、1カ月等で定められた「所定労働時間」を超える勤務が「所定外労働」になります。休日の勤務も「所定外労働」です。
なお、労使協定により、下記の方は対象外とされる場合があります。
 
 
・勤続年数が1年未満の方
・週の所定労働日数が2日以下の方

時間外労働の制限

小学校に入学するまでの子どもがいる方は、「時間外労働の制限」を申し出ることが可能です。
所定外労働と時間外労働は似ている言葉であり、会話では特に区別なく使用されているかもしれませんが、法律上は別のものとして定義されています。
時間外労働とは、1日8時間、1週40時間を超える労働のことをいいます。1日の労働時間が9時~17時30分(休憩1時間)と定められている場合、9時から19時まで勤務したとすると、所定外労働が30分、時間外労働が1時間となります。
なお、フレックスタイム制の場合は、下記の時間を超える労働が、「時間外労働」となります(※清算期間が1カ月の場合)。
 

暦日数 超えると時間外労働となる時間
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

 
この時間外労働を、1カ月について24時間、1年について150時間までに制限する制度です。
完全にNGとするのではなく、上限を定める制度となり、「所定外労働の制限」や「深夜業の制限」と比べると、社員と会社双方にとって少々わかりにくい制度となっています。
また、下記の方は対象外となります。
 
 
・勤続年数が1年未満の方
・週の所定労働日数が2日以下の方

所定外労働の制限と時間外労働の制限の違い

所定外労働 時間外労働
会社の所定労働時間(始業・終業時刻)を超えて働く時間 法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働く時間
各制限の申し出ができる対象:子が3歳未満 各制限の申し出ができる対象:小学校入学まで

深夜業の制限

小学校に入学するまでの子どもがいる方は、「深夜業の制限」を申し出ることが可能です。
深夜業とは、午後10時~午前5時までの勤務のことです。申し出た場合、上記時間帯の勤務を全く行わない働き方ができます。
なお、下記の方は対象外となります。
 
 
・勤続年数が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下の方
・深夜において請求に係る子を常態として保育できる同居の家族がいる方
・所定労働時間の全部が深夜にある方
 
「深夜において請求に係る子を常態として保育できる同居の家族」とは、16 歳以上の同居の家族であって、下記のいずれにも該当する方のことを指します。
 
 
① 深夜に就業していないこと(深夜における就業日数が1カ月について3日以下の場合を含みます。)。
② 負傷、疾病等により子の保育が困難な状態でないこと。
③ 6週間(多胎妊娠の場合は 14 週間)以内に出産する予定であるか、又は産後8週間を経過しない者でないこと。
 
この規定だけを見ますと、配偶者のいる方はほぼ申し出ができないことにはなってしまいますが、現実的には小さな子を育てる方(特に女性)に対し、申し出を拒むケースは多くないといえるでしょう。

法律よりも会社規定の方が良い場合も

今回ご案内いたしました制度の対象者は、あくまで法律上最低限のものです。
小学校入学まで「所定外労働の制限」を認めていたり、小学生まで「深夜業の制限」を認めていたりと、法律以上の規定を設けている会社も少なくありません。
ご自身の在籍する会社の就業規則や育児介護休業規程を、是非確認してみましょう。

※親しみやすい表現を心掛けておりますので、法律上の文言とは違う表現をしている場合があります。例:「請求」→「申し出」など。

《 監修 》

  • 木幡 徹(こはた とおる)  社会保険労務士

    1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。ベンチャーでのIPO準備を経て、現在はM&Aに積極的な上場企業に在籍。企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。

    HP https://fe-labor-research.com/

     

     

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