2020.02.04
妊娠中の方であれば通常は受けることになる「妊婦健康診査」やその一環としての「保健指導」を受けるための時間として、早退やお休みの申し出を行うことができます。土日などの決められた休日に妊婦健康診査などを受けることができる状態であっても、会社はこの申し出を拒否することができません。もし、決められた休日での受診を命じられたとすれば、それはマタニティーハラスメントといえます。ご自身の健康が第一ですから、仕事を理由に妊婦健康診査を受けないという選択は、絶対にしないようにしましょう。
大都市圏の通勤ラッシュは、時間帯や路線によってはすさまじく混雑し、とても妊娠中の方が安心して利用できる状態ではありません。医師等から、通勤緩和の指導を受けた際には、その旨を会社に申し出て、配慮を受けることができます。
具体的には、時差出勤や、時短勤務、交通手段や通勤経路の変更です。これについても、会社は申し出を拒否することができません。
妊娠中は、体調や職務内容などによって、医師等から休憩に関する指導を受けることがあります。具体的には、休憩時間の延長、休憩回数の増加、休憩時間帯の変更などです。会社に申し出ることにより配慮を受けられますので、指導を受けた際には、ためらわずに申し出しましょう。やはり、会社は拒否することができません。
労働基準法、男女雇用機会均等法における、いろいろな制度を紹介しました。
これらは、妊婦に対する危険有害業務の就業制限を除いて、申し出をすることが必要ですから、心理的なハードルがあると感じてしまう方もいるようです。確かに、このような配慮を受けることについて、「権利意識が高い」などとやゆする人間が一定数存在することも事実です。また、そこまではいかなくても、人員が不足している会社などでは、時短勤務などにより他の社員が業務過多になってしまうことがありますので、業務が増加する当事者としては仕方ないとわかっていても、複雑な思いを抱いてしまうことがあります。「私は大丈夫だった」という「女性から女性へのマタニティーハラスメント」もあります。会社の評価や同僚の目がどうしても気になってしまう…、これは自然なことと言えるでしょう。
とはいえ、まず第一に言えることは、自分自身と生まれてくる子どもの健康が最優先だということです。それらより大事な仕事など、この世に存在しないはずです。同僚の業務が増加することについても、それは会社の管理上の問題であり、あなたが原因ではありません。
申し出ることが難しい場合には、「母性健康管理指導事項連絡カード」というものを使用するのも手です。これについては、別の記事で触れます。
※親しみやすい表現を心掛けておりますので、法律上の文言とは違う表現をしている場合があります。
例:「請求」→「申し出」など。
《 監修 》
木幡 徹(こはた とおる) 社会保険労務士
1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。スタートアップ企業の体制構築やIPO準備のサポートを主力とし、企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。
▶HP https://fe-labor-research.com/