抗てんかん薬 (こうてんかんやく):興奮と抑制のバランスを整える薬【医師監修】

2021.11.08

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てんかん

てんかん とは?

 

けいれんは脳の異常な電気的活動による突発的な現象をいい、「てんかん」は繰り返すけいれんでたいてい同じ発作症状を認めます

 

私たちの脳では神経細胞と神経細胞の間を常に電気信号が行きかい、脳内の情報伝達や体への指令を担っています。

神経細胞は互いにスイッチを入れたり(興奮)、オフにしたりして(抑制)バランスをとっていて、膨大な電気信号が乱れることなく情報を伝えています。

 

それが、例えば、興奮性の神経が活発になり過ぎると、興奮と抑制のバランスが突然崩れて電気信号が過剰に発生してしまい、手足がけいれんする、手足が突っ張って体がこわばる、意識を失うなどの症状が現れます。これが「けいれん」です。けいれんを繰り返す病気が「てんかん」です。

 

けいれんの原因には興奮ニューロンの亢進、あるいは抑制性ニューロンの機能低下により起きるとされています。

 

てんかんの発作は大きく2種類に分かれ、過剰な電気信号が脳の一部分から発生した「部分発作」(焦点発作とも言います)と、広い範囲で同時に発生した「全般発作」があります。

てんかんの薬「 抗てんかん薬 」はどんな薬?

抗てんかん薬 は、興奮性の神経の働きを鎮めるか、抑制性の神経の働きを活発にするかして、興奮と抑制のバランスを整える薬です。

 

ただし、内服の抗てんかん薬は、「今起こっている発作」を抑えるためではなく、普段から飲み続けて発作が起こらないようにするための薬です。

決められた回数やタイミング、量を守って飲みましょう。発作が起こらなくなったからといって、自己判断で薬を減らしたりやめたりしてはいけません。

 

 

この記事では『子どもに使われる主な抗てんかん薬』を紹介します。

薬を使い始めて何か気がかりなことがあれば、医師・薬剤師に相談しましょう。

抗てんかん薬同士や他の病気の薬との間で相互作用がある(どちらかの、または両方の薬の作用を強めたり弱めたりする)場合もあるので、他に飲んでいる薬、新たに飲み始めた薬があれば、必ず医師・薬剤師に伝えましょう。

よく処方される病気

 

てんかん

抗てんかん薬の種類:普段から飲み続けて発作が起こらないようにするための薬

デパケン/デパケンR/セレニカR(バルプロ酸ナトリウム)

<薬の形状>

細粒、シロップ、錠剤

<特徴>

抑制性の神経を活発にするタイプの抗てんかん薬。様々なタイプのてんかん発作に使われる1)。デパケンRとセレニカRは、効き目が長く続くように設計されている。

<注意>

嘔気や嘔吐、体重増加、脱毛、肝機能障害や膵炎、高アンモニア血症、カルニチン欠乏など

 

・テグレトール(カルバマゼピン)

<薬の形状>

細粒、錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作の治療で最初に使われます1)

<注意>

飲み始めや薬の量を増やした時は、眠気・吐き気・めまいなどが起こりやすいので、特に注意します2)。グレープフルーツジュースと一緒に飲むとこの薬の作用が強く出ることがあるので避けましょう2)。薬を飲んで1−2週後に皮膚の発赤や腫脹などが現れたら、すぐに医師の診療を受けます2)

 

・イーケプラ(レベチラセタム)

<薬の形状>

ドライシロップ、錠

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作と、全般発作の一部に使われます。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。

ちょっとした刺激で気持ちや体の変調を来たす、意識の混乱、あせる、興奮しやすい、攻撃的になるなどの症状が現れたら、医師・薬剤師に相談します2)

4歳以上に一般に使用します。

 

・ラミクタール(ラモトリギン)

<薬の形状>

錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作の治療で最初に使われる薬剤の1つです4)。全般発作の一部にも使われます。

<注意>

重い薬疹の副作用があるので、決められた飲み方を必ず守ります2,3)。薬を飲んで皮膚の異常などが現れたら、ただちに医療機関を受診します。バルプロ酸ナトリウムを併用するときは投与量の調整が必要です。

 

・ガバペン(ガバペンチン)

<薬の形状>

シロップ、錠剤

<特徴>

興奮性、抑制性それぞれの神経に作用する抗てんかん薬1)。部分発作に使われます。

<注意>

眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。

 

・トピナ(トピラマート)

<薬の形状>

細粒、錠剤

<特徴>

興奮性、抑制性それぞれの神経に広く作用する抗てんかん薬1,3)。部分発作に使われます。

<注意>

副作用として発汗の減少があり、そのため特に夏は体温が上昇することがあります2)。体温上昇に注意して、高温の場所をできるだけ避けましょう。

 

・フィコンパ(ペランパネル水和物)

<薬の形状>

細粒、錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作と、全般発作の一部に使われます。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。眠気や口腔内分泌物の増加があります。

ちょっとした刺激で気持ちや体の変調を来たす、攻撃的になる、敵意をもつ、不安、死にたいという気持ちになるなどの症状があらわれたら、直ちに医師に相談します2)

 

・ビムパット(ラコサミド)

<薬の形状>

ドライシロップ、錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作と、全般発作の一部使われます。

<注意>

めまい、霧視、眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下などが現れることがあります2)

4歳以上に一般に使用します。

 

・アレビアチン/ヒダントール(フェニトイン)

<薬の形状>

散、錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。半世紀以上にわたる歴史があり、部分発作などに使われています。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。多毛や歯肉が目立つ副作用があります。薬を飲んで皮膚の異常などが現れたら、すぐに医師の診療を受けます2)

 

・リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)

<薬の形状>

細粒、錠剤

<特徴>

抑制性の神経を活発にするタイプの抗てんかん薬。部分発作の一部などに使われます。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。分泌物過多。

 

・エクセグラン(ゾニサミド)

<薬の形状>

散、錠剤

<特徴>

興奮性の神経を鎮めるタイプの抗てんかん薬。部分発作、全般発作のどちらにも使われます。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。

副作用として発汗の減少もあり、そのため特に夏は体温が上昇することがあります2)。体温上昇に注意して、高温の場所をできるだけ避けましょう。まれに尿路結石をきたすこともあります。

 

・マイスタン(クロバザム)

<薬の形状>

細粒、錠剤

<特徴>

抑制性の神経を活発にするタイプの抗てんかん薬。全般発作、部分発作ともに使用されます。

<注意>

眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こることがありますので2)、お子さんの様子に注意しましょう。分泌物過多。

抗てんかん薬の種類:けいれん発作が起きた時に使用する薬

ブコラム(ミダゾラム)

<薬の形状>

液剤

<特徴>

抑制性の神経を活発にするタイプの抗てんかん薬。けいれん発作時に使用する。発作が5分以上続いたり、短い発作が繰り返し起きたりしている時(てんかん重積状態)に使いますう。液剤を口の中に垂らして、頬の粘膜から薬を吸収させまする。

<注意>

投与後に救急車を呼ぶ、医療機関を受診するなど、対応について事前に医師と話し合っておきましょう5)

『参考資料』

1) 高橋幸利編.新 小児てんかん診療マニュアル.診断と治療社.2019
2) くすりの適正使用協議会.くすりのしおり.(11月08日閲覧:https://www.rad-ar.or.jp/siori/index.html)
3) 重藤寛史.日内会誌1076):1108-11142018
4) 中川栄二.脳と発達51(2)91-962019
5) ブラコムを使用されるお子さんの介護者の方へ(11月8日閲覧:https://www.buccolam.jp/patients/

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。

    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。

    小児科専門医、小児神経専門医。

     

     

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