2021.10.26
1. クループ症候群とはこんな病気
2. クループ症候群の原因と症状
3. クループ症候群の検査でわかること
4. クループ症候群の治療法と薬
5. クループ症候群のホームケアと予防
クループ症候群は声帯の下部の気道のむくみによる狭窄(すぼまって狭くなる)が原因で起こる病気です。
頻度の高い症状で、多くはウイルス感染症により起こります。
図1:のどの構造
主な働きは食物が気管に入らないようにすることと、声を出すこと(声帯)です。
クループ症候群は、生後3カ月から7歳の子どもが主にかかり、寒い季節に多い病気で、重症の場合には入院治療が必要です1)。
毎年、乳幼児の2~6%がクループ症候群にかかり、そのうちの約5%は繰り返しかかるといわれています2)。
クループ症候群の原因のほとんどは、パラインフルエンザウイルス、📖インフルエンザウイルス、📖アデノウイルス、📖RSウイルスなどのウイルスの感染によるものです。
一方、喉頭蓋炎はインフルエンザ菌b型(ヒブ)やジフテリア菌などの細菌感染が原因で、ヒブワクチンや三種混合ワクチンの普及により日本ではほとんどみられなくなっています。
また、アレルギーが原因になることもあります1)。
クループ症候群の原因はさまざまですが、原因は違っていても、自覚症状と他覚症状がほぼ同じです3,4)。
ウイルスによるクループ症候群の感染経路は、患者さんの咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染(ひまつかんせん)や、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です2)。
症状は、鼻水などのカゼのような症状に引き続き、犬がケンケンする鳴き声またはオットセイの鳴き声のような特有の甲高い咳(犬吠様咳嗽/けんばいようがいそう)が出ます。
これらの症状は、昼間より夜や明け方に急に現れることが多く、発熱を伴うことも多いです1)。
通常は、このような症状が数日繰り返され発熱や犬吠様咳嗽が始まってから3日ほどでよくなってきますが、症状が1週間ほど続くこともあります(図2)1)。
クループ症候群は、喉頭部の側面X線撮影で診断・確認します1)。
軽症の場合には、ご家庭で加湿などをこころがけて安静にしていれば自然に治ります。
ただ、症状が出てから24~48時間は、急に呼吸の状態が悪化することがあるので注意が必要です1)。
お薬による治療は、のどの腫れを抑えるためデキサメタゾンのようなステロイド薬の飲み薬が処方されることもあります1)。
原因のほとんどがウイルスによるため、抗菌薬(抗生物質)は使われません。
クループ症候群の予防は、飛沫感染と接触感染を防ぐため、マスク着用などの咳エチケットと手洗いや手指のアルコール消毒の励行です5)。
クループ症候群のホームケアでは、加湿と安静をこころがけます1)。
加湿は、加湿器を用いたり、室内に洗濯物を干したりして行います。
安静は、静かに休ませ顔色や呼吸の状態を繰り返し確かめます。
寝かせるときは肩枕をすると呼吸が楽になります。
また、以下のような様子が見られたら、すぐに医療機関で診てもらいましょう1)。
(1) 息を吸うときに、のどの付け根や胸をへこませる呼吸(陥没呼吸)をする(図3*)
(2) 脈拍が非常に速くなる
(3) 顔色や唇の色が紫がかった色になる(チアノーゼ)
(4) 水が飲み込めなくなり、口を開け、舌を出した状態でよだれが出る
(5) 起き上がってあごを前に、頭を後ろにし、口を開けてあえぐような呼吸をする(起坐呼吸(きざこきゅう)、下顎呼吸(かがくこきゅう))(図4*)
図3:陥没呼吸
図4:起坐呼吸と下顎呼吸
登園、登校は、症状がひどいときには、主治医の許可をもらってからにしましょう6)。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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