気管支ぜんそく (喘息)とその発作について【執筆・監修:アレルギー専門医】

2022.02.18

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気管支ぜんそく(喘息)とその発作について【執筆・監修】小島 令嗣(こじま れいじ) アレルギー専門医 

以前の記事(▶子どもはアトピー性皮膚炎があると 食物アレルギー になりやすい?【アレルギー専門医監修付き】)で、子どものアレルギーマーチ(アレルギー疾患の合併)について述べていますが、アレルギー性鼻炎・結膜炎やアトピー性皮膚炎に並び、「気管支ぜんそく(以下、喘息(ぜんそく))」も、比較的有病率の高いアレルギー疾患です。

そのため、病名を聞いたことがあるという方は多いと思います。

 

ここ十数年で薬剤が進歩し、診療のガイドラインも整備されたことから、入院する人や重症化する人は少なくなってきています1)

 

今回は喘息についてと、どのようなきっかけで喘息発作が出るのか、またその治療について紹介します。

 

病気についての詳細は併せてこちら(▶気管支ぜんそく (きかんしぜんそく/喘息)はどんな症状?【医師監修】)の記事も確認ください。

喘息(ぜんそく)の病態と喘息発作が起こるしくみ

喘息は主に口と肺をつなぐ空気の通り道である気管支で起こる病気です。

 
下記の図は気管支を輪切りにしたイラストです。

 

 

健康な人の気管支は一番左の円のイラストです。
 
一方で喘息の人の気管支は、中央のイラストの様に、粘膜層(オレンジ色の層)に炎症(赤い部分)があり、厚くただれた状態になっています。

この状態は喘息発作が起こる前段階です。
 
この状態に呼吸器感染症やダニなどのきっかけとなる刺激が加わると、気管支粘膜でアレルギー反応が起こり、喘息発作が引き起こされます。
発作中の気管支では、粘膜層(オレンジ色と赤の層)はさらに厚くなり痰(水色)も増えます、また気管支の周りの筋肉(ピンクの層)が収縮するため、気管支の空気の通り道が狭くなります。
 
狭い所を空気が通ると笛の原理で音が出ます。

そのため発作中の人の胸の音を聴診器で聞くと「ゼイゼイ、ヒューヒュー」といった音が聞こえます。

 

症状としては咳や喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューとした呼吸)、呼吸困難(息をはき出しづらくなる)が起こります。

喘息発作を引き起こす要因

喘息発作のきっかけとなる要因(誘発・悪化因子)は多岐にわたります1)

特に急に寒くなる秋口は発作を起こした患者さんの受診が増えます。

 

≪喘息発作のきっかけとなる要因≫

・アレルゲン(ダニ、花粉、毛のあるペットなど)
・呼吸器感染症(ヒトライノウイルス、RSウイルスなど)
・タバコの煙、大気汚染、花火の煙など
・気象条件(急に寒くなる)
・激しい運動、ストレス

など

喘息の治療を途中でやめないことの大切さ、喘息発作の時の対処法について

喘息の治療は「発作が起こった時の対応」と「発作が治まった後の対応」に大きく分けられます。

 
再び図を用いて説明します。

 

喘息発作(右のイラスト)が起こり病院へ受診すると、まず発作に対する治療(図の①)が行われますが、①の気管支拡張薬だけで治療をやめてしまうと気管支の状態は喘息発作が起こる前段階(中央のイラスト)のままであるため、発作を引き起こす要因が体に入ってくると再び喘息発作を繰り返してしまいます。

 

そこで発作が治まった後に抗炎症薬を使った治療(図の②)を行い気管支の炎症を抑え、図の一番左の健康な状態の気管支していくことが重要です。

発作が起こった時の治療内容(医療機関で喘息の診断を受けている場合)

まず水分をとって腹式呼吸を行います。

※腹式呼吸=息を吸うときにおなかが膨らみ、息を吐くときにおなかが凹む(引っ込む)呼吸方法。横隔膜を上下に動かして呼吸をします。

 
自宅用に処方された気管支拡張薬(吸入や内服)を服用します。

それでも改善しなければ、病院にて気管支拡張薬の吸入や抗炎症薬の点滴などを受けます。

 

〈注意〉

息を吸うときに喉やろっ骨の間などがはっきりとへこむ、明らかにゼイゼイしている、脈が速い、顔色が悪い、話すのが苦しい、眠れないなどの症状がある場合、「強い喘息発作」のサインである場合があります。ただちに医療機関を受診してください2)

発作が治まった後の治療は?

医師の指示の下、炎症を抑える抗炎症薬の内服や吸入をしばらく継続し、発作が起こらないか様子をみながら調整します。

 

この治療が本格的に普及したのは十数年前です。

治療が普及し始めてから喘息で入院する小児の患者さんは少なくなってきています。
発作を起こさないように、自宅の環境を整備することも重要です。
家族の禁煙やダニやペットの対策などできるだけ誘発・悪化因子を減らしていきます。

環境を整えることで、避けることの難しい要因(急に寒くなるなど)があっても発作が起こらずに過ごせるようにします。

気管支炎と喘息の違いについて

気管支炎は、気管支に一過性の炎症が起こった状態で、ほとんどの場合ウイルスの感染によるものです3)

 
一方、気管支ぜんそくは、気管支などの粘膜が慢性的に炎症を起こすことで、気道が狭くなるアレルギー性の病気で3)、きっかけとなる要因(誘発・悪化因子)は多岐にわたります。

 

どちらも咳(せき)をしたときや息を吐くときに、ゼイゼイ、ヒューヒューという笛の鳴るような音(喘鳴:ぜんめい)がみられることが多く、区別が難しい時があります。

特に2歳未満ではまだ気管支が細いため痰が絡むとゼイゼイと音がしやすく、医師にも判断が難しいです。

気管支を広げる薬により、症状がよくなるかが喘息発作を診断する一つの目安です。
 
 
 

『参考文献』
1) 一般社団法人日本小児アレルギー学会:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020. 協和企画, 2020.
2) 藤澤隆夫(総監修):おしえて先生!子どものぜん息ハンドブック 第2版. 環境再生保全機構, 2021.
(2022年2月1日閲覧:https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium56_13.pdf
3) 金子堅一郎(編): 気管支喘息、気管支炎、細気管支炎. 子どもの病気とその診かた第1版. 南山堂. p289-292,p182-185.

《執筆・監修》

  • 小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医 

    防衛医科大学校卒業。
    山梨大学 社会医学講座
    アレルギー専門医 
    専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健

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