2021.10.18
1. 乳児湿疹/脂漏性湿疹とはこんな病気
2. 脂漏性湿疹の原因と症状
3. 脂漏性湿疹の検査でわかること
4. 脂漏性湿疹の治療法と薬
5. 脂漏性湿疹のホームケアと予防
生後1歳前後の子どもにできる皮膚の湿疹をまとめて乳児湿疹(にゅうじしっしん)といい、アトピー性皮膚炎、脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)などが含まれます1)(図1)。
ここでは脂漏性湿疹について説明します。
図1:乳児湿疹の分類
脂漏性湿疹は皮脂腺の多いところに出る湿疹で、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とも呼ばれます2,3)。
頭や顔、おむつで覆われている部分などに赤いぶつぶつ、黄色っぽいかさぶたなどの湿疹が出ます2,3)。
脂漏性湿疹は生後2カ月から12カ月までが症状の出やすい時期です4)。
脂漏性湿疹は皮脂の分泌が盛んなために起こります。スキンケアや必要に応じて炎症を抑える塗り薬を使用することで治ります2,3)。
なお、思春期や成人にみられる脂漏性湿疹は、乳児と異なり積極的に治療を行う必要があり、ステロイドや免疫抑制剤の軟膏、📖抗真菌剤の軟膏や特殊なシャンプーで治療を行います4)。
脂漏性湿疹の原因は十分には解明されていませんが2,3)、皮膚に普通に存在する「マラセチア」という酵母がリパーゼという酵素を出して角質層を破壊し遊離脂肪酸をつくり、炎症をきたすからとされています。
この酵素は遊離脂肪酸により増殖し、さらに炎症を助長させるため、未熟な角質細胞が増殖し特徴的な湿疹となるようです4)。
脂漏性湿疹が出やすいのは顔と頭の脂漏部位で、例えば、おでこ、まゆ毛の部分、ほほなどです。2,3)。おむつに覆われている部分に出ることもあります。
小さな赤いぶつぶつがたくさん集まるようにできてきて、その部分の皮膚が赤くなります2,3)。黄色っぽい「かさぶた」が上を覆うようになります。
湿疹がからだ、手足などに広がったり、長く続いたりする場合、またはかゆみが激しい場合には、アトピー性皮膚炎とも考えられます1,3,6)。
脂漏性湿疹は生後1カ月の赤ちゃんの3人に1人が経験しますが5)、アトピー性皮膚炎もありふれた病気で、自然治癒、軽快が期待できる病気です6)。
通常、脂漏性湿疹は診断するための手かがりになるような検査がなく3)、医師は子どもの皮膚の状態を診察したり、経過を聞いたりして診断します。
脂漏性湿疹以外の乳児湿疹に対しては、血液検査でアレルギーの有無などを調べることもあります2)。
脂漏性湿疹には、医師が必要だと判断した場合、皮膚の炎症を抑えるためにステロイドの塗り薬が使われます3)。
赤ちゃんは成長するにつれて、皮脂の分泌が減少していくので3)、乳児の脂漏性湿疹は2歳ごろまでに治るとされています2)。
皮膚を清潔に保つことは、乳児湿疹・脂漏性湿疹に限らず大切なことです。
せっけんなどを使用して、やさしく洗ってあげましょう3,6)。分厚いかさぶたがついている場合は、無理にはがそうとせず、医師に相談します。
過度に直射日光に当たるのは皮脂を変化させることから、避けた方がよいでしょう6)。
『参考資料』
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。
小児科専門医、小児神経専門医。
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