多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )とは?どのように治療するの?【医師監修】

2020.05.25

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子宮のトラブル

多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )とは?

多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )は、卵巣の内側に小さな卵胞がたくさん育ってしまい、排卵しにくくなる病気です。若い人の排卵障害で最も多い疾患です。

 

本来、卵巣の中では、いくつか育った卵胞の中から1個の卵胞が大きくなって排卵します。しかし、多嚢胞性卵巣症候群では、一度にたくさんの卵胞が育ち、ある程度の大きさまで育つと成長が止まり、卵巣内で詰まって外に飛び出せなくなります。そのため、排卵障害として妊娠しにくい原因になります。

 

*PCOS:polycystic ovarian syndrome

多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )の原因は?

多嚢胞性卵巣症候群の原因は、はっきりと分かっていません。脳から出るホルモンのバランスが悪い人、男性ホルモン値が高い人、血糖値が高めの人に多く見られます。

欧米では肥満による人が多いですが、日本では肥満型は1/3で2/3がやせ型といわれています。

多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )の検査は?

多嚢胞性卵巣症候群では、排卵しにくいため、月経周期が長くなったり、無月経になったりします。

 

採血によるホルモン検査では、LHがFSHより高い、男性ホルモンが高い、AMHが高いなどの特徴があります。

 

また、超音波検査で卵巣を見ると、ある程度の大きさまで育った複数の卵胞が卵巣の中に連なって見えます。これは多嚢胞性卵巣症候群の特徴的な状態として、ネックレスサインと呼ばれています。

多嚢胞性卵巣症候群の治療は?

多嚢胞性卵巣症候群の治療は、妊娠を希望している場合は、排卵誘発剤で排卵を促します。妊娠の希望がない場合は、定期的にホルモン剤を投与して月経を起こします。

 

排卵誘発剤は、まずマイルドな効き目の飲み薬(クロミフェン製剤)を服用して、卵胞が発育して排卵するか確認します。飲み薬で効果がなければ、注射の排卵誘発剤に変更します。注射の排卵誘発剤は卵巣を直接刺激するもので、飲み薬よりも効果が強いため、卵巣が腫れて腹水がたまるなどの症状を起こす卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まります。また、複数の卵胞が大きく育つと多胎妊娠の可能性も高くなります。

こうした点も踏まえながら、診察にて卵巣の状況を判断しながら、慎重に治療を進めていくことになります。

 

PCOSは排卵誘発剤に対して、過剰反応したり逆に無反応だったりすることがあります。薬の投与量の調整が難しい場合は、体外受精も選択肢になります。複数育った卵子を採卵して凍結すれば、子宮に戻す(胚移植)受精卵を1個ずつにできるので、体の回復を待ってから胚移植ができ、多胎妊娠の可能性も軽減できます。

《 監修 》

  • 洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医

    聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。

    不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。

    HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院

     

     

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