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【医師監修】妊娠中 の胎盤の役割は?胎盤の異常で起こる病気にはどんなものがある?

2024.02.12

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【監修】井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

妊娠が成立すると、着床した受精卵から絨毛(じゅうもう)という根のような組織ができて子宮と血液の交換を始めます。

 
胎盤は、この絨毛が子宮に入り込んで形成される円盤状の器官で、へその緒を通じておなかの赤ちゃんとお母さんをつないでいます。
胎盤は妊娠7週目ごろから形成が始まり、15週目ごろには完成します。
その後、赤ちゃんの成長とともに大きくなり、出産の頃には直径20~30㎝、厚さ2~3㎝、重さ500~600gほどになります。
 
胎盤は、子宮の中で赤ちゃんが成長するために非常に重要な役割を果たします。
一方、胎盤にトラブルが起きると、赤ちゃんの成長や発育に影響したり、場合によっては母子共に危険な状態になったりすることもあります。 1)

▼胎盤は、1つの器官でありながら、赤ちゃんのさまざまな器官の役割をしています。

胎盤の役割:①呼吸器としての役割

ヒトは呼吸器(肺)を用いて酸素を吸って二酸化炭素を出します。

動物は原則として酸素がなければ生きていけませんが、おなかの赤ちゃんは、自分の肺で呼吸をすることができません。
そこで、胎盤を介してお母さんの血液から酸素を受け取り、いらなくなった二酸化炭素を排出しています。

胎盤の役割:②消化器や泌尿器としての役割

おなかの赤ちゃんは、胎盤を介してお母さんの血液から栄養を受け取っています。

また、消費した後の老廃物は胎盤を通してお母さんの血液に排出されます。

胎盤の役割:③内分泌器としての役割

妊娠すると、胎盤の元となる絨毛からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。

このホルモンは、妊娠を維持し赤ちゃんが成長しやすい環境を整えるために必要な、プロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲンといった女性ホルモンの分泌を促します。

胎盤の役割:④フィルターとしての役割

胎盤は、赤ちゃんにとって有害な物質がお母さんから届かないようにするフィルターとしての働きもしています。

ただし、胎盤ができあがっていない妊娠初期には、このフィルター機能は十分には働きません。
また、胎盤の機能が完成しても、アルコールやたばこのニコチンなどフィルターを通過して赤ちゃんに影響を与える物質があります。

▼胎盤の異常によって起こる病気は?

胎盤の異常:①前置胎盤(ぜんちたいばん)

胎盤は受精卵が着床した場所にできますが、低い位置で着床してしまうと胎盤も低い位置になります。

 

低さの程度はさまざまですが、完全に子宮口をふさいでしまうのが前置胎盤です。
前置胎盤の場合特に張りもないのに出血することがありますが(警告出血)、一番怖いのが本格的な陣痛が来た場合です。
子宮口は開きますがその瞬間から「蛇口をひねったような」大出血になるといわれています。
 
もちろん母子共に命の危険が極めて高くなるため、お産は原則として陣痛が来る前に帝王切開によって行われますし、適切に対応しても出血は非常に多くなり、輸血が必要になることも少なくありません。
 
前置胎盤の場合は、前もって自己血を貯血しておく施設もあります。
胎盤の位置は着床時点で決まってはいるのですが、最終的に子宮のどの位置に胎盤があるかは妊娠中期以降の超音波でなければ分かりません。
初期に低く見えても問題ないことも多く、前置胎盤の診断は基本的には妊娠後期になってから行います。
多くの施設で、妊娠中期に胎盤の位置を確認し、疑わしい場合はきちんとフォローします。 2)

胎盤の異常:②低置胎盤(ていちたいばん)

胎盤が子宮口をふさいではいないものの、通常よりも低く子宮口の近くにある場合を低置胎盤といいます。

 
妊婦健診の際の超音波検査で位置や周囲の血管を確認し、大量の出血が予測される場合は帝王切開になります。経腟分娩可能と判断された場合でも通常より出血量が多くなる傾向があります。

胎盤の異常:③常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)

通常の位置にある胎盤が、妊娠中や分娩時にまだ赤ちゃんが子宮にいる段階で剥がれることを、胎盤早期剥離といいます。

 
自覚症状としては、おなかが板のように固くなる、腹痛が続く、胎動が少なくなるなどがあげられますが、剥がれた範囲が狭いうちは明確な症状が出ないこともあります。
しかし、その後も剥離範囲は広がっていき、広範囲に剥がれると赤ちゃんへの血液の供給が止まるため、超緊急帝王切開をしても救命できないこともあります。
またお母さんも大量出血とそれに伴う凝固系の異常のため、命に関わるような病態になります。
 
妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)の人は常位胎盤早期剥離を起こしやすいとされています。
ほかにも、喫煙習慣やおなかを強く打つことなどもリスクを高めます。 3)
 

胎盤の異常:④癒着胎盤(ゆちゃくたいばん)

胎盤は、通常出産後に自然に体の外に排出されます。

 
癒着胎盤は、胎盤が子宮に入り込んで剥がれなくなった状態で、無理に剝がそうとすると大量出血を起こし、母体の生命が危険になることもあります。
出産前に診断することは困難で、慎重に処置をしても胎盤が剥がれない場合は全身麻酔下に胎盤の娩出を試みますが、癒着が非常に強い場合は、まれですが抗がん剤の一種を用いることもありますし、最悪の場合は子宮摘出をすることもあるとされています。
しかし多くの場合は時間をかけて対応することで娩出することができます。

胎盤の異常:⑤胎盤機能不全(たいばんきのうふぜん)

胎盤の働きが悪くなり、おなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素が供給されなくなることを胎盤機能不全といいます。

 

特に病気などなくても40週を超えるころになればある程度の胎盤機能の低下は起きますが、その低下が赤ちゃんの元気さを損なうくらいまで落ちた場合に胎盤機能不全と考えます。
胎盤の機能低下は赤ちゃんへの酸素の供給低下や栄養の供給低下をもたらしますので、妊娠の早い時期に起こった場合は赤ちゃんの発育不全として現れます。
妊婦健診で赤ちゃんの発育不全が疑われた場合は、胎盤機能不全を意識しながら元気さをモニタリングし、状況に応じて陣痛促進や帝王切開などで早めのお産にすることもあります。
 

💡胎盤機能の低下はどんな人にも起こりますが、妊娠高血圧症候群や高齢出産は胎盤機能不全となることが多いため、一層の注意が必要です。
また予定日を超え妊娠42週が近づいても赤ちゃんが生まれそうにない場合は、過期産予防として陣痛促進剤を使用することもあります。

おなかの赤ちゃんにとって、胎盤は外の世界に出るまでの命をつなぐ大切な器官です。
胎盤機能の低下は自分では気付かないものですが、おなかの張りや痛み、不正出血、赤ちゃんの胎動の減少などがあれば、かかりつけの産婦人科をすぐに受診してください。

『参考資料』

1)国際幹細胞普及機構:受精卵から胎盤が生まれる仕組み、東北大学などが解明:2024年2月閲覧(https://stemcells.or.jp/baby/
2)公益社団法人 日本産科婦人科学会:前置胎盤:2024年2月閲覧(https://www.jsog.or.jp/
3)公益社団法人 日本産婦人科医会:常位胎盤早期剝離:2024年2月閲覧(https://www.jaog.or.jp/

《 監修 》

  • 井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

    よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。

    HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科

     

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