2024.01.19
1. 副鼻腔炎 とはこんな病気
2. 副鼻腔炎 の原因と症状
3. 副鼻腔炎 の検査でわかること
4. 副鼻腔炎 の治療法と薬
5. 副鼻腔炎 のホームケアと予防
副鼻腔は鼻腔(びくう=鼻の穴の奥)の周りにある空洞の部分をさします。
かぜなどによる鼻粘膜に起きた炎症が副鼻腔にまで広がって、副鼻腔炎になるのが典型的なパターンです。
上気道炎の5~10%は副鼻腔炎を合併していると推定されます。
副鼻腔炎が 3カ月以上にわたって続く場合は慢性副鼻腔炎と診断されます。
急性副鼻腔炎のうちに治しておくことが大切だといえます。
なお、最近は鼻炎と副鼻腔炎を一連の病気と考え、「鼻副鼻腔炎(び・ふくびくうえん)」と呼んだり1) 、副鼻腔に膿が溜まることから「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ぶこともあります。
なお、鼻の奥はのどにつながっていますが、のどと耳は「耳管(じかん)」でつながっています。
そのため、かぜなどで、のどや鼻(上気道〈じょうきどう〉とまとめます)に炎症が起きると、上気道の炎症が耳管を伝って耳の中の「中耳」に波及することが多くあります。
これが「急性中耳炎」です。
どれも洞窟の「洞」がついているので、イメージしやすいと思います。
このうち上顎洞と篩骨洞は、生まれたときからあり、成長とともに空洞が大きくなって、思春期に完成します。
他の2つは、7歳の頃から発育が始まります。
ちなみに、副鼻腔が何のためにあるかは、はっきりしていません。
一般的には、「頭の重量を軽くしておくため」「声を反響させるため」などといわれています。
鼻腔と副鼻腔はつながっているので、炎症が広がってしまうというわけです。
かぜの原因はウイルスで、急性副鼻腔炎もウイルス感染から始まりますが、数日後には細菌感染に移行することが多いとされています1) 。
原因となる細菌は、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別の病原体)、肺炎球菌が主体です1) 。
急性副鼻腔炎の症状は、鼻水、鼻づまり、鼻水がのどの方に流れる「後鼻漏(こうびろう)」があります。
鼻水は、粘りを帯びた黄色や黄緑色の濃い状態が特徴です。
副鼻腔から見ると鼻腔が唯一、外界との交通路ですが、その通りが悪くなり、膿が溜まり粘りを帯びた状態になります。
小児ではせき(ゴホゴホと湿ったせき、たんがからんだようなせき)も重要なポイントです。
その他に、機嫌が悪くなったり、発熱や鼻出血がみられたり、炎症がある副鼻腔の箇所(おでこ、目の周り、頬など)に一致して痛みを感じることがあります1) 。
副鼻腔炎が3カ月以上続いている状態が続くと、慢性副鼻腔炎と診断されます2) 。
症状は急性と同様に、粘っこい鼻水、鼻づまり、せき、などです。
急性副鼻腔炎が長引いていることの他、感染とは無関係の因子(アレルギーなど)の関わりも考えられます。
さらに、治りにくい原因として、鼻の奥にある扁桃の肥大(アデノイド)の関連が考えられています。
まれに篩骨炎に続発する眼窩蜂窩織炎は重篤な合併症で緊急性があります。
副鼻腔の状態(貯留物など)を確認するため、補助的にレントゲン、CT撮影が行われることもあります。
後で触れる抗菌薬を、原因菌に応じて適切に選ぶために、鼻水中の細菌の種類を調べることもあります。
5日後に症状が改善していなければ、抗菌薬による治療が行われます。
その場合は、ペニシリン系抗菌薬(📖子どもの処方箋『抗菌薬』)が最初に使われます。
中等症や重症では最初から抗菌薬が使われます。
症状の改善度合いによって薬を続けたり、変更したりします。
ピボキシル基(ピバリン酸)を含有する抗菌薬は、体内にあるカルニチン(アミノ酸の一種)と結合して尿に排泄されます。乳児や幼児はカルニチンが欠乏しやすく、低血糖や痙攣を起こすことが報告されているので用心します。
慢性副鼻腔炎には、マクロライド系の抗菌薬を少量、長期間続けて飲み、繊毛運動が改善することで慢性の炎症が改善します3) 。
副鼻腔炎による頭痛や発熱があるときはアセトアミノフェンを使用します。
耳鼻咽喉科では、薬をミストのような状態にして鼻に噴霧し、有効成分を鼻の奥まで届かせる「ネブライザー療法」が行われることもあります。
副鼻腔の炎症や、鼻づまりなどを改善します。
子どもの副鼻腔炎の約50%は自然に治る傾向があるとされます4) 。
見方を変えれば、半数しか自然に治らないともいえるので、適切に治療することが大切です。
手洗い、人混みを避ける、といったことを心がけましょう。
鼻をかむときは、あまり力を入れず、左右片方ずつ、ゆっくりとかむようにします。小さい子どもで鼻をかめない時は、吸引をしましょう。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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