産褥期 に起こりやすい症状とは?産褥期に起きやすい体のトラブル【医師監修】

2021.10.04

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お腹を押さえる女性

産褥期(さんじょくき)について

産褥期という言葉をご存じでしょうか?

10カ月おなかの中で赤ちゃんを育ててきたお母さんの体は、子宮のサイズやホルモンの分泌(ぶんぴつ)などが大きく変化しています。

 

産褥期とは、出産後に体が妊娠前の状態に戻るまでのおよそ6~8週間のことです。

こちらの記事では、その間に起こりやすい体の変化や、産後の数カ月の間に多くのお母さんが悩む体のトラブルについてご紹介します。

子宮が回復することで起こる体の変化

子宮復古(しきゅうふっこ)

子宮は、出産直後に握りこぶし大まで急速に収縮した後、おへその下くらいまで大きさが戻り、収縮を繰り返して小さくなっていきます。

これを子宮復古といい、約6週間で妊娠前の状態に戻ります。

子宮が収縮すると、生理痛よりやや強いような痛みを感じることが多く、これを後陣痛と呼びます。特に産後数日間は痛みが強くなりがちです。

また、授乳のときも、赤ちゃんが乳頭(にゅうとう)を吸うことで子宮の収縮を促すホルモンが分泌され、痛みが強まることがあります。

 

 

 

後陣痛(こうじんつう)

分娩(ぶんべん)後、子宮が急速に収縮するときの痛みを後陣痛といいます。

陣痛や生理痛に似た、子宮が収縮することによる痛みです。

初産婦より経産婦の方が子宮の戻りが早いため、後陣痛を強く感じるようです。

授乳時に乳頭への刺激から痛みが強くなることもあります。

後陣痛は通常、分娩当日から23日で軽くなります。

 

 

悪露(おろ)

悪露は、子宮の収縮に伴って排出されるおりもので、血液やリンパ液に、粘液や卵膜(らんまく)の一部が混じっています。

出産当日から2~3日は、真っ赤で量が多いですが、次第に色が薄くなり、産後2週間くらいには通常の生理の量程度になります。

1カ月健診ごろには普段のおりもののような色や量になりますが、まだ量が多い人もいます。

多くの人が6週ごろにはほとんどなくなります。

産後に起こりやすい痛み

●会陰(えいん)の痛み

分娩時の会陰切開や裂傷はその場で縫合しますが、その後の痛みの感じ方は人によって異なります。

多くの病院では、吸収糸という体内で溶けて消える糸を使って縫合します。

このとき埋没縫合という縫い方だと抜糸をしなくてよい反面、溶けるまで時間がかかるため傷口がつれるような違和感が数週間続くことがあります。

施設によっては、吸収糸でも退院前に抜糸できるような縫い方にすることもあります。

ナイロン糸などの溶けない糸で縫合した場合、抜糸は必要になりますが、抜糸後の突っ張り感はかなり減ります。

痛みが強くなかなか改善しない場合は、遠慮せずに2週間健診や1カ月健診で医師・助産師に相談しましょう。

 

 

●恥骨(ちこつ)・尾てい骨(びていこつ)の痛み

恥骨は左右に分かれていて、骨盤の前側で靭帯(じんたい)によってつながっています(恥骨結合)。

出産に際してこの恥骨結合は赤ちゃんが通りやすいように緩みますが、過度に負荷がかかると、結合部分が離れてしまいます。

すると、産後起立時に痛みを感じたり、歩行困難になったりすることがあり、これを恥骨結合離開と呼んでいます。

多くは骨盤ベルトなどで支えることで自然に回復しますが、ひどい場合は治るまで数週間かかることもあります。

 

 

 

●乳房(にゅうぼう)の張り・痛み

出産後は、乳汁(にゅうじゅう)を作るために乳房への血流量が増加します。

この血液が乳房内でうまく循環しなくなると、乳房に熱っぽい張りや痛みを感じることがあります。

また、赤ちゃんが上手におっぱいを吸えないうちは乳管(にゅうかん)に乳汁がたまりやすく、これも張りや痛みの原因になりますし、乳腺炎という感染によって炎症を起こすこともあります。

産後に起きやすい体のトラブル

●尿漏れ(にょうもれ)

妊娠・出産により骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)が弱ると、排尿のコントロールがうまくできなくなり、尿漏れの原因になります。

一時的な尿漏れは自然に回復しますが、お産に時間がかかったりした場合の排尿障害では、薬物治療の対象になることもあります。

また、骨盤底筋群を鍛える運動も効果的です。

 

●妊娠線(にんしんせん)

一度できてしまった妊娠線を完全に消すことはできません。

ただし、次第に赤みが薄くなり、皮膚の色に同化していきます。

妊娠線は皮膚の裂傷ですので、刺激を与えたり日焼けをしたりすると色が濃くなることもあります。

できるだけ保護的に扱いましょう。

 

●抜け毛(ぬけげ)

産後23カ月から抜け毛が多くなることがあります。

原因は、ホルモンバランスの変化に加え、栄養不足、疲労やストレスなどです。

多くの場合、抜け毛は半年から1年で治まり、徐々に元の状態に戻ります。

 

※産後の病気についてはこちらの記事で紹介しています。
→リンク先こちらから

 

まとめ

産後は、赤ちゃんのお世話に追われる生活になりがちです。

でも、出産後の体が元に戻るには時間がかかるので、焦らずにリラックスして過ごしたいもの。

そのためには、パートナーや周囲の人と育児や家事を分担して、できるだけ無理のない生活を送りましょう。

また、体の変化について気になることがあったら、早めに受診してください。

《 監修 》

  • 井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

    よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。

    HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科

     

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