2023.04.05
1. 夜尿症(やにょうしょう) とはこんな病気
2. 夜尿症(やにょうしょう)の原因と症状
3. 夜尿症(やにょうしょう)の検査でわかること
4. 夜尿症(やにょうしょう)の治療法と薬
5. 夜尿症(やにょうしょう)のホームケアと予防
夜眠っているときに、自分の意志と関係なく尿が出ることを夜尿(やにょう)と呼んでいますが、 5歳以上になっても1カ月に1回以上の夜尿が、3カ月以上続く場合を夜尿症(やにょうしょう)と呼んでいます(図1)1) 。
言い換えると、尿の排泄や睡眠の働きが大人型になる以前の5歳以下の乳幼児が眠っている間におしっこを漏らすのは、通常のおねしょであり、5歳以上になっても眠っている間におしっこが漏れるのは、治療が必要なおねしょ(夜尿症)ということになります2,3) 。
図1:子どもの成長段階と夜尿症
治療が必要なおねしょ(夜尿症)かどうかの診断は5歳以上で行うが、治療の開始は小学校入学後が多い。
夜尿症のある子どもの割合は、5~6歳で約20%、小学校低学年で約10%と、年間約15%ずつ自然に減ってゆき、中学生では1~3%になります。ただ、わずかですが成人になってもみられることがあります3,4) 。
また、2:1の比率で男の子に多い病気です3) 。
夜尿症は、命にかかわる病気ではないため、医療機関で「様子をみましょう」といわれることや、周囲の人からも「自然に治る」といわれることもありますが、お子さん本人が自信をなくしたり自尊心が傷つけられたりするうえ、保護者の方も「育て方が間違っていたのでは?」などと悩むことがあるので、夜尿症を病気と考えてきちんと対応することが大切です。
ですから、小学校に入っても夜尿症が続く場合は、いちど小児科か泌尿器科を受診してみましょう2,3,5) 。
夜尿症は、ご両親のどちらかまたは両方が夜尿症であった場合に起こりやすいのですが、原因となる遺伝子は特定されていません3) 。
夜尿症の原因には、
(1) 自律神経の働きが弱いなどで、膀胱(ぼうこう)に尿がいっぱい溜まっても目が覚めない
(2) 眠っているときに尿が作られるのを抑える抗利尿ホルモンの分泌不足で、夜でも尿が多く作られる
(3) 尿が出るのを抑える働きが未熟などにより、膀胱に溜められる尿の量が少ない
の3つの要因がかかわっているといわれています(図2)3) 。
小児科では、夜尿症を眠っている間の尿の量と膀胱に溜めておける尿の量(膀胱容量:ぼうこうようりょう)のバランスによって、尿の量が多い多尿型(たにょうがた)、膀胱容量の少ない膀胱型(ぼうこうがた)、これら2つのタイプがみられる混合型の3つのタイプに分類していています4) 。
夜尿症の症状は、5歳以上になっても1カ月に1回以上、夜眠っている間に無意識に尿が漏れることです。
図2:夜尿症の原因
夜尿症の診断では、原因がほかの病気や障害によるものかどうかを判断するため、詳しい問診を行います。
問診では、年齢、性別、ご両親に夜尿症があったか、オムツが取れた時期、便秘の有無、精神的ストレスの有無などを確認します6) 。
また、排尿日誌(はいにょうにっし)をご家族につけていただき、尿の量や膀胱容量、昼間の尿の回数なども確かめて診断に役立てます7) 。
夜尿症の検査には以下のようなものがあります。
尿検査では、糖尿病、尿崩症(にょうほうしょう)、尿路感染症の有無や尿の比重などを調べます。
腹部の超音波検査文字では、尿路結石の有無などを調べます。
血液検査では、腎機能の障害、尿崩症、糖尿病の有無を調べます6) 。
夜尿症の治療では、まず生活指導として、
を行います8) 。
生活指導で十分良くならない場合には、お薬による治療やアラーム療法を行います。
お薬による治療は、眠っている間の尿が作られる量を抑える抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン、ミニリンメルト)が使われます。
アラーム療法は、パンツの前に取り付けるセンサーと、音とバイブレーションで尿が出たことを知らせるアラームユニットの2つの部品で構成された機器で(図3)9) 、数カ月続けると尿が漏れる前に目が醒めるようになります。
図3:アラーム療法に使われる機器
ワイヤレス型も販売されています。
お薬とアラーム療法のいずれでもあまり効果がみられない場合には、これら2つの治療法を併用します2,10) 。
併用してもあまり効果がみられない場合には、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン)や抗コリン薬(オキシブチニン、トルテロジンなど)が使われることがあります。
ただし、抗コリン薬は保険適応外です。
家庭で気をつけること8) 。
家庭では、お子さんに以下のように接するとよいでしょう8,11) 。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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