2022.03.07
「便秘」のとらえ方や考え方は人によって異なりますが、いつもと比べ便が出ない日が続く(排便回数が減る)、便が硬くて出にくい、排便するのに苦痛や努力が必要になるなどの状態が続き、日常生活に支障をきたす場合などに「便秘症」と診断されます。1)
毎日排便がある場合でも、出すときに痛がる様子がある、肛門が切れて血が出る、少量のコロコロとした便や柔らかい便が1日に少しづつ何回も出る場合は、便秘の可能性があります。2)
便秘症が1~2カ月以上続く場合には、「慢性便秘症」と診断されます。2)
便秘症は、便の回数、硬さなどを問診で確認し、必要に応じてレントゲン撮影や超音波検査を行います。2)
1歳未満の赤ちゃんの場合は消化器が未発達なため、排便ペースは一定ではないことが多く、個人差も大きいものです。
数日間排便がなくても、機嫌がよく母乳や粉ミルクを飲む量が変わらない場合や、離乳食の進みが良い場合は心配しなくてもよいでしょう。
赤ちゃんは、まだ排便が上手ではないため、ちゃんと息んでいるのになかなか便が出せないことがあります。2)
便が硬くて出にくい、おなかが張るなどの症状が続いた場合は、綿棒浣腸(綿棒にワセリンなど滑りやすくなるものを塗って肛門を刺激する)などでホームケアを行い、改善がみられない場合は医療機関を受診します。
なお、便秘になると排便した日はよく食べ、出ない日はあまり食べないという特徴があります。
そのため1週間で評価すると食事の量が少ないため通常より体重が増えにくくなり、便秘の状態が続くと身長の伸びも悪くなります。
子どもが便秘を発症しやすい時期は、
離乳食開始(5、6カ月頃)などによる食事内容の変化、牛乳アレルギー、排便時の嫌な経験、適切な時期と内容でないトイレトレーニング、生活環境の変化時などです。4)
したがって6カ月以降に体重が増えない場合は、便秘をまず疑うことが大切です。
難しいのは便秘がひどくなるとお腹が便だらけになり、毎日硬めの便が出て、便秘ではないと判断される可能性があることです。
米国のマニュアルにはレントゲン検査が便秘の診断に役立つとされています。
体重増加や硬い便が毎日続く、あるいは毎日便が出ないときはレントゲン検査を行うと診断しやすいです。
便秘薬は下剤とも緩下剤(かんげざい)とも呼ばれます。大きくは、刺激性下剤と、浸透圧性下剤(非刺激性下剤)に分かれます。
刺激性下剤はその名の通り、腸の粘膜を刺激し、腸の動きを盛んにして排便を促す薬剤です。
下痢になったり、お腹が痛くなったりする副作用があります。
浸透圧性下剤は、硬い便を柔らかくする便秘薬です。服用後、腸管の中にたどり着いた薬(または体内で分解された成分)が、水分を腸の壁から便に集めます。水分を吸った便は柔らかくなって、排出されやすくなります。子どもには浸透圧性下剤の方が使われています3)。
便秘薬を使うと癖になるのではないか、だんだん量を増やさないと効かなくなるのではないかと心配されるかもしれませんが、それに関する十分なエビデンス(証拠)はないとされています4)。
適切な薬を使わないことで排便が遅れ、便が硬くなって、ますます出しづらくなるという「便秘の悪循環」の方が問題とされます4)。
もちろん、薬はあくまで対症療法であり、便秘の原因を取り除いているわけではないことは頭に入れておきましょう。
この記事では、子どもに使われる主な便秘薬を紹介します(2021年時点)。
薬を使い始めて何か気がかりなことがあれば、医師・薬剤師に相談しましょう。
便秘、過敏性腸症候群(腸自体に異常はないのに下痢や便秘、腹痛などがある)
など
<特徴>
腸内の水分を便に含ませるようにして、柔らかく膨らませて排便を促します。
2歳児までの便秘には、まずこの薬が使われます。
<注意>
吐き気、嘔吐、口が渇くなどの副作用が現れたら、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けます
5)。
<薬の形状>
坐剤
<特徴>
坐薬タイプの便秘薬です。
腸内で徐々に炭酸ガスを発生し、腸の運動を盛んにして排便を促します5)。
<注意>
使用後15〜30分で排便があるので、使用するタイミングを考慮するとよいでしょう5)。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。
小児科専門医、小児神経専門医。
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