【医師監修】腸閉塞を引き起こす『 腸重積 (ちょうじゅうせき)』はどんな病気?症状を見分けるポイントは?

2023.09.28

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【監修】神奈川県立こども医療センター:総合診療科 松井 潔先生

目次

1.  腸重積 とはこんな病気

2.  腸重積 の原因と症状

3.  腸重積 の検査でわかること

4.  腸重積 の治療法と薬

5.  腸重積 のホームケアと予防

1.  腸重積 とはこんな病気

腸重積になりやすい年齢:生後3カ月~12カ月
症状:急に火がついたように泣いたりおさまったりを繰り返す、嘔吐を繰り返す、粘液の混じった血便、など
体の部位:大腸、小腸

 

腸重積は、腸の一部が隣り合う肛門側の腸に入り込んで重なり合った状態になる病気です(図1)。1,2) 

 

腸が塞がってしまうため、腸閉塞(ちょうへいそく:イレウスともいいます)を引き起こします。
腸閉塞によって、血液の流れや腸の内容物の移動が阻害されます。
 
腸重積で最も多いのは、小腸の末端(回腸)が、大腸の始まる部分(上行結腸:じょうこうけっちょう)に入り込む回腸結腸型ですが、小腸が小腸に入り込む小腸小腸型などもみられます2)

 

腸重積を起こす年齢は、1歳未満が最も多く、1歳未満のお子さんの発生率は0.2%程度です。生後3カ月未満の乳児や6歳以上では少ないといわれています。
また、男児に多い病気で、男児と女児の比は約2:1です2)

 

図1:腸重積を起こした腸の様子

2.  腸重積 の原因と症状

腸重積のほとんどは、原因が不明の特発性(とくはつせい)のものです。

 
腸重積のほとんどは原因が不明ですが、腸炎や乳児では今まで食べたことのない食事によって腸のリンパ節が腫脹して腸重積をきたすことがあります。

一方で、原因と思われる病変がみつかるのは、患者さんの3~4%ですが、年齢があがるほど原因病変がみつかる割合が増え、5歳以上では約60%に原因がみつかります。
 
主な原因には、メッケル憩室(めっけるけいしつ:小腸の壁が袋状になって外側に突き出た状態)、腸管重複症(正常な本来の腸以外に異常な腸(重複腸管)が余分に存在する生まれつきの病気)、ポリープなどがあります3,4)
 
腸重積の症状は、急に火がついたように泣いたり、おさまったりを繰り返す(間欠的啼泣:かんけつてきていきゅう)、嘔吐を繰り返す、粘液の混じった血便(イチゴゼリー状、イチゴジャム状と表現する)、お腹が膨れる、などです(表1)4,5)
血便は発症してすぐには出ないこともあります1)
 

表1:腸重積の主な症状4,5)
・急に火がついたように泣いたり、おさまったりを繰り替えす(間欠的啼泣:かんけつてきていきゅう)
・嘔吐を繰り返す
・粘液の混じった血便(イチゴゼリー状、イチゴジャム状)
・お腹が膨れる
・顔が青ざめる

3.  腸重積 の検査でわかること

腸重積は、症状が多彩なうえ腸重積特有の症状がないため、症状だけから診断することは難しいといわれています。

 
ほとんどの場合、超音波検査で診断できます。
超音波検査で診断がつきにくい場合には、肛門に細いチューブを挿入して、そのチューブから造影剤や空気を注入し、X線で撮影する注腸造影検査(ちゅうちょうぞうえいけんさ)が行われることがあります6)
 
また、お腹の表面を丁寧に触ると、入り込んで重なり合った腸の塊を感じられることがあります7)

4.  腸重積 の治療法と薬

腸重積は診断と緊急治療が必要な病気です。

腸重積によって腸を循環する血の流れが滞ると、腸の細胞組織が死んで壊死(えし)を起こすため、できる限り早く治療を始めることが大切です。
 
治療法には、肛門から細いチューブを入れて、造影剤や空気を送り込み、その圧力で入り込んでいる腸を押し戻す高圧浣腸による非観血的整復術(ひかんけつてきせいふくじゅつ)と(図2)1) 、手術によって開腹して、医師の手で入り込んでいる腸を押し戻す観血的整復術(かんけつてきせいふくじゅつ)があります8)
 
腸に壊死がある場合は、その部分の切除を行います4)
 
図2 高圧浣腸による治療(非観血的整復術)

5.  腸重積 のホームケアと予防

腸重積の初期には、診断がつかないこともあります。

 
しかし、腸重積はできる限り早い治療が必要な病気なので、以下のような症状がみられる場合は、夜間や休日でもすぐに病院を受診してください1)
 

(1) だんだん元気がなくなって行く
(2) 嘔吐の回数が増える
(3) イチゴジャムのような血便が出る

『参考資料』

1) 日本外来小児科学会(編著).:腸重積. 子どもの病気ホームケアガイド 第5版. 医歯薬出版. p61, 2020.
2) 日本小児救急学会(監修).:エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン 改訂第2版. へるす出版. pp6-9, 2022.
3) 日本小児救急学会(監修).:エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン 改訂第2版. へるす出版. p10, 2022.
4) 金子堅一郎(編).:4. 腸重積, 腸閉塞. 子どもの病気とその診かた第1版. 南山堂. pp139-142, 2015.
5) 徳洲会グループ.:小児の病気:腸重積症. (2023年4月閲覧:https://www.tokushukai.or.jp/treatment/pediatrics/choujuuseki.php
6) 日本小児救急学会(監修).:エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン 改訂第2版. へるす出版. pp19-30, 2022.
7) 済生会.:腸重積症.(2023年4月:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/intussusception/
8) 日本小児救急学会(監修).:エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン 改訂第2版. へるす出版. pp4-5, 2022.

《 監修 》

  • 松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医

    神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。

    神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。

    小児科専門医、小児神経専門医。

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