2022.02.14
アナフィキラシーという言葉を知っていますか?
2019年12月に中国で初めて感染が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年の春から夏に感染対策の一環としてワクチン接種が国を挙げて進められてきました。
その際「アナフィラキシー」という言葉をよく耳にしたと思います。
アナフィラキシーは重いアレルギー症状の事なのですが、今回はその具体的な症状や原因、その対応について紹介します。
アナフィキラシーは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起(じゃっき)され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています1)。
簡単にいうと2カ所以上の臓器にアレルギー症状が出て危険な状態になることです。
さらに「血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます1)。
ではどこの臓器に症状が出るのでしょうか。
以下の4項目のうち、2カ所以上でアレルギー症状があるとアナフィラキシーと診断されます。
特に皮膚症状はアレルギーでは、頻度の高い症状です2)。
アレルギーを起こす原因は食物、薬剤、刺咬昆虫の毒(ハチ、蟻)など多岐にわたります1)。
ワクチンの成分によりアレルギーを起こす場合もあり、予防接種の会場ではアナフィラキシーを想定した準備がされています。
子どものアナフィラキシーを引き起こす原因で多いのは食べ物です。
以降は食物アレルギーへの対応に、アナフィラキシーへの対応を含めて紹介します。
自宅で子どもが食後にじんま疹(かゆい発疹)が初めて出た場合は、救急外来を受診しましょう。
食事の内容や時刻、症状の発症時刻などをメモしておくと診断の助けとなります。
医師は、臓器の症状と程度から重症度を判定し、以下の対症療法(主要な症状を軽減するための治療方法)を行います。
原因のアレルゲンにかかわらず基本的に治療は同じです。
アナフィラキシーと診断された場合、まずはアドレナリンの筋肉注射による治療が一番に行われます。この筋肉注射は早期に投与されることが重要です2)。
その後酸素投与や点滴が行われ、多くが入院となります。
アナフィラキシーまで至っていない「軽い症状」の場合は、皮膚症状には抗ヒスタミン薬の内服、呼吸器症状には気管支拡張薬の吸入、消化器症状には点滴(口から食べられない場合)など、症状に応じた治療がされます。
その後、詳しい問診や血液検査、食物負荷試験(疑わしい食物を病院で試す)などからアレルギー症状の原因を調べます。
再発防止のための原因検索、原因回避、再度アナフィラキシーショックが起きた時の対応を医師と患者さん・家族とで確認をしておくことが重要です2)。
アレルギーがあると診断されたお子様がいるご家庭では、誤食時の対応表を医師と相談して作っておくことで、不安が和らぎ、何よりも急に症状が出た時に慌てずにすみます。
具体的にどのような症状があらわれているかがチェックでき、するべき対応が簡単に分かるような対応表を作ります。
この症状であれば軽症で様子を見てよいとか、この症状は中等症なので誤食時の抗ヒスタミン薬を内服して病院へ連絡するとか、この症状はアナフィラキシーなので、エピペン®(アドレナリン自己注射薬)を打って救急車を呼ぶなど、対応を事前に確認することが重要です。
下記のサイトで紹介されている内容も併せてチェックを行いましょう。
▼東京都福祉保健局:東京都アレルギー情報navi.「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」(2022年2月3日閲覧)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/measure/emergency.html
《執筆・監修》
小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医
防衛医科大学校卒業。
山梨大学 社会医学講座
アレルギー専門医
専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健