2022.02.02
・花粉に反応してくしゃみや鼻水が出る。
・じんましんの赤いぶつぶつがかゆくてたまらない…。
このようなアレルギー反応を抑える薬が抗アレルギー薬で、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましんなど、さまざまなアレルギー疾患の治療に使われます。
アレルギー反応のどの段階を抑えるか、アレルギー反応にかかわるどの物質を抑えるか、どの病気に主に使われるかによって、いつくかのグループに分かれています。
例えば、アレルギー疾患全般に使われる「抗ヒスタミン薬」、アレルギー性鼻炎と気管支喘息に使われる「ロイコトリエン受容体拮抗薬」、気管支喘息などに使われる「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」などです。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬だけを指して「抗アレルギー薬」ということもあります。(図1)
根本治療として、アレルギーの原因となるスギ花粉やダニをあえて少しずつ体内に取り入れ、徐々に慣らしていく「アレルゲン免疫療法薬」もあります。
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この記事では、子どもに使われる主なアレルギーの薬をピックアップしました(2021年時点)。
薬局で購入する一般用のかぜ薬や花粉症薬に抗ヒスタミン薬が含まれていることは多いので、併用する場合は一緒に飲んでよいか、医師・薬剤師に相談しましょう。
よく使われるのは「抗ヒスタミン薬」というグループの薬です。第1世代と第2世代があります。
花粉症のシーズンにテレビCMで放送されることもあり、何種類かの薬が思い浮かぶかもしれません。
ヒスタミンは、アレルギー反応の鍵を握る体内物質です。
鼻の粘膜や皮膚の「マスト細胞」(肥満細胞ともいいます)という部分に蓄えられていて、アレルゲンとマスト細胞が結合するとヒスタミンが放出されて、神経や血管にある「鍵穴」に結合し、くしゃみ、鼻水、皮膚の赤み、かゆみなどのアレルギー反応を引き起こします。(図2)
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抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが鍵穴に結合しないようにブロックして、鼻や皮膚などに現れる症状を抑えます。
薬の効果により、分泌物が少なくなることで、鼻水や痰(たん)が硬くなりかえってつらくなることもあります。
また、抗ヒスタミン薬(特に第1世代)は脳に移行するため、眠気、食欲亢進、痙攣(けいれん)が起こりやすくする等の副作用があります。
最もよく現れる副作用は眠気です。
ヒスタミンは脳内で働き、「体を目覚めさせておく」役割を担っていますので、抗ヒスタミン薬を服用するとその役割をブロックしてしまい副作用として眠くなります。
同時に、ヒスタミンは脳内で「痙攣(けいれん)を抑制する」役割も担っているため、抗ヒスタミン薬を服用した子どもは痙攣にも注意する必要があります。
また、食欲が亢進するため、漫然と使用すると肥満になることもあり、上手に使うことが大切です。
脳に移行しない夢の「第3世代の抗ヒスタミン薬」は未だ開発されていませんが、眠気を抑える新薬の開発は進んでいて、現在では、眠気のでやすい「第1世代抗ヒスタミン薬」と、眠気の副作用を抑えた「第2世代抗ヒスタミン薬」に分類されています。
副作用の強さは成分ごとで異なります。
第2世代抗ヒスタミン薬が開発されたとはいえ、薬価(医療用医薬品の公定価格)が比較的安いというメリットがあるので、第1世代も使われています。
医師は対象となる病気や症状、お子さんの年齢、他の病気の有無などを考慮して、適した抗ヒスタミン薬を処方します。
抗ヒスタミン薬が、放出されたヒスタミンが鍵穴に結合するのを防ぐのに対して、ケミカルメディエーター遊離抑制薬は、ヒスタミンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)がマスト細胞から放出されるのを抑えます。
吸入薬(気管支喘息)、点鼻薬(アレルギー性鼻炎)、点眼薬(アレルギー性結膜炎)などと、病気に応じてさまざまな形状の薬があります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、アレルギー性鼻炎や気管支喘息の成り立ちに関わる体内物質「ロイコトリエン」の働きをブロックする薬です。比較的副作用は少ないです。
アレルゲン免疫療法薬は減感作(げんかんさ)療法ともいわれ、アレルギーの根本的な治療法です。
原因物質のエキスを皮下注射する方法が以前から行われていますが、近年、エキスが入った錠剤を口内(舌の下)で溶かして粘膜から吸収させる「舌下免疫療法」が、花粉症やアレルギー性鼻炎の治療として承認されました。
舌下免疫療法専用の処方薬がいくつか発売されていて、1日1回の投与を続けると、鼻や目の症状が軽くなるとされています。副作用は一時的なものが多く、口内のかゆみ、口内のむくみ、のどの刺激感などです。
アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、じんましん、かぶれ(接触皮膚炎)、気管支ぜんそく など
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。
小児科専門医、小児神経専門医。