2021.11.17
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おたふくかぜは、流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)ともいい、ウイルスの感染で唾液を分泌する唾液腺である耳下腺(じかせん)が炎症を起こして腫れる病気ですが、顎下腺(がっかせん)が腫れることもあります(図)。顔がおたふくのように腫れるので、一般におたふくかぜと呼ばれています1)。
感染しても症状が現れない不顕性感染(ふけんせいかんせん)が30~35%の人にみられますが2)、不顕性感染でも、他の人にうつす可能性があります。
図:耳下腺(じかせん)と顎下腺(がっかせん)
おたふくかぜに似た症状が現れる病気に、反復性耳下腺炎があります。
反復性耳下腺炎はおたふくかぜと同様に耳下腺が腫れる病気で、繰り返し症状が現れます。
おたふくかぜでは左右両方の耳下腺が腫れることが多いのに対し、反復性耳下腺炎は片側だけが腫れることが多く、熱も出ないことが多いです。また、他の人にうつることはなく、1~2週間で自然によくなりますが、かかり始めにはおたふくかぜも片側性のことがあるので区別がつきにくいです1,2,3)。
おたふくかぜの原因は、ムンプスウイルスと呼ばれるウイルスです。
ムンプスウイルスはのどや鼻から人の体に入り、気道の粘膜で増殖した後に全身にまわり、耳下腺や顎下腺に炎症を起こします1)。
感染経路は、患者さんの咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染(ひまつかんせん)と、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染で、感染力はかなり強いといわれています2)。
ムンプスウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、2~3週間で、人にうつしやすい時期は、耳下腺や顎下腺が腫れる1~2日前から腫れあがってから5日目までです1)。
おたふくかぜの主な症状は、耳下腺や顎下腺の腫れと痛み、発熱で、発熱は2~3日続きます。頭痛や腹痛、吐き気がみられることもあります1)。
合併症として、📖ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)や難聴がみられることがあるほか、思春期以降にかかると、男性では睾丸炎(こうがんえん)、女性では卵巣炎を起こすことがあります。ウイルス性髄膜炎は、軽症の場合が多いのですが、おたふくかぜの症状が現れた小児の約10%にみられるといわれています2)。
耳の聞こえ方は、耳元で時計の音などを聞かせ、聞こえた方の手を挙げてもらって調べます。小さい子どもでは、見えない所でおもちゃなどの音を鳴らして反応をみてください3)。難聴は、片側だけに起こることが約95%で、両側に起こることは約5%といわれています5)。
おたふくかぜの合併症については前方視的な研究*がすくないとされています。
診断は通常、症状をみて行われます。確定診断のために、ムンプスウイルスの抗体を調べる血清学的診断、PCR法によるウイルス遺伝子の有無を調べる遺伝学的診断、咽頭ぬぐい液、尿、髄液のウイルスの有無を調べるウイルス分離検査が行われます1)。
確定診断のための検査は一般に行いませんが、症状が強いとき、ウイルス性髄膜炎、難聴等の合併症を伴うときは検査を行います。
おたふくかぜの治療薬は、現在のところないので、安静にして発熱や痛みに対する対症療法を行います1)。
おたふくかぜの予防の唯一の方法は、ムンプスウイルスワクチンです。
ワクチン接種により90%以上の人で、抗体が有効なレベルになるといわれています2)。
ワクチンは、任意予防接種として1歳以上の子どもに接種できます。
ホームケアでは、痛みがある時は冷やして痛みを和らげる、軟らかい食事にして水分補給を行う、酸味の強い食べ物や飲み物は控えるなどが挙げられます(表)。
表:おたふくかぜのホームケア
また、以下のような様子がみられたら、もう一度診察を受けましょう3)。
(1) 5日以上高熱が続く
(2) 頭痛が強く、何度も吐く
(3) 1週間たっても耳下腺や顎下腺の腫れがひかない
(4) 耳下腺の腫れが赤くなる
(5) お腹や睾丸(こうがん)を痛がる
おたふく風邪は、学校保健安全法で出席停止期間が定められており、第二種の学校感染症に指定されています。
登校・登園は、耳下腺や顎下腺が腫れてから5日経ち、熱が下がって食欲が戻って元気になるまでできません3)。
『参考資料』
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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