男性の 精子 力を上げる栄養素とは?食事はどのようなものが良いの?【助産師監修】

2021.03.29

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【監修】助産師:濵脇文子先生

不妊の原因は女性だけではない?

 

2017年に欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の学術誌で発表された論文では、欧米の男性の精子数が40年間で半減したとの結果が明らかになりました。
そして、その状況は欧米だけのものではなく、日本も例外ではありません。
日本でも約5人に1人の男性が、世界保健機関(WHO)が定める精子数、精子運動率の基準を下回り、不妊リスクを抱えています

 

自然妊娠に必要とされる精子に関するいくつかの要素(精子濃度、精子運動率、総精子数、精液量)のうち、どれか一つでもWHOの基準を下回る人は、4人に1人もいたという一説もあります。
 
🖊WHOが定める精液検査の基準値

精液量は1.5ミリリットル以上
精子濃度は1500万以上
精子運動率は40%以上
※基準値が上回っていても妊娠が保証されるわけではありません

精子も年齢とともに老化する

卵子も精子も加齢とともに産生される数の減少や質の劣化が起こることが分かってきました。

老化によって、精子の数や精液の量、運動率が下がるだけでなく、精子のDNAの損傷率も高くなっていくのです。
精巣の大きさも小さくなり、男性ホルモンの分泌も低下していきます

30歳代と50歳代の精液を比較した結果、精液量、精子運動率、精子正常形態率の低下が報告されています。
しかし正常に精子が作られている男性の場合、女性の閉経のように加齢が原因で造精機能が停止してしまうことはないと考えられています。

 

妊娠や出産、健康のためにも大切な「精子力」。
精子力を維持し高めるためには、肥満予防や禁煙、飲酒を控える、下半身を締めつけないなどの生活習慣の改善とともに、精子に良い栄養を取ることが重要です。

 

 

▼参考記事
精子の運動率が40%未満、1ml中の精子の数が1,500万未満、正常形態精子率が4%未満の時
精子無力症 ・乏精子症・精子奇形症はどんな症状?原因や治療法について(不妊治療)【医師監修】

精子力を上げる栄養とは

①造精機能を促進する亜鉛やアルギニンを取る

たんぱく質の合成を助ける亜鉛と、たんぱく質を作るアミノ酸の一種アルギニンは精子の運動性を高めたり、造精機能を促進したりするという報告があります。
亜鉛が不足すると精子を作る精巣や、精液を分泌する前立腺の発育が低下するともいわれており、質の良い精子を作るためには意識して摂取しておきたい栄養素です。
亜鉛やアルギニンを含む食べ物は牡蠣、牛肉、豚肉、大豆などです。
アルギニンは鶏肉、牛乳、大豆製品などに含まれます。

 

 

②オメガ-3脂肪酸(DHA+EPA)の摂取

ナッツまたは魚に多く含まれており、精子形成精子が形成される過程に良い影響を及ぼします。

 

 

③葉酸、ビタミンA、ビタミンB12を摂取

葉酸は精子の数を増加させ、精子のDNAの断片化を低下させる働きがあります。
(DNA断片化とは、精子に含まれるDNAが損傷してしまうことで、胚発生の低下や流産率の上昇と関係します)精子が形成される過程に必要な、ビタミンAや亜鉛は過度な飲酒によって不足する可能性があるので要注意です。

栄養素を多く含む食事とは?

オリーブオイル・全粒穀物・野菜・果物・豆・ナッツが豊富でチーズやヨーグルトも頻繁に使われている地中海料理は、好ましい食事とされています。
また、魚介類・穀物・豆類などを中心に食事を取り続けることで、精子のDNAの断片化が低下するという報告もあるようです。

 

魚介類を食べることは精子にも健康にも良い効果がありますが、魚介類と一緒に摂取されるメチル水銀は、摂取量が多いと精液に影響を及ぼすとの報告があります。
 
キンメダイ・メバチマグロなどのメチル水銀が多い魚と、サケ・サバ・タイなどの少ない魚がありますので、魚介類を食べる頻度や種類など偏らずに選んでいくことが大切です。

 

また、高脂肪、赤肉または加工された肉、精製した小麦などの穀類、お菓子と加糖飲料などの摂取割合の高い食事は、精液の質の低下と関係していると報告されていて、好ましくない食事とされています。

 

 

 

 

『参考資料』
・ NHKスペシャル「あなたの“精子力”は大丈夫?ニッポン“精子力”クライシス
国立健康・栄養研究所
・Levine H, et al. Human Reproduction Update 2017 Nov 1; 23(6): 646-659.
・Nassan FL, et al. Fertility and Sterility 2018 Sep; 110(4): 570-577

《 監修 》

  • 濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師

    大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
    助産師・保健師・看護師。
    産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
    はぐふるアンバサダー。
     
    妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
    また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
     
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