2020.06.01
検査によってリスク因子が判明すれば、その治療を行うことができます。治療が必要かどうかは主治医と相談しましょう。
子宮の形態異常があれば、手術をすることがあります。甲状腺機能異常や糖尿病は、薬物療法できちんとコントロールしておくことが大切です。抗リン脂質抗体症候群の場合は、低容量アスピリンやヘパリン注射などの薬物療法が行われます。夫婦いずれかの染色体構造異常(均衡型転座、Robertson型転座など)の場合、治療法はないのですが、出産できる可能性は染色体異常の状況によって変わります。遺伝専門のカウンセリングをお勧めします。血液凝固異常(第XII因子欠乏症、プロテインS欠乏症など)は、程度によって低容量アスピリンやヘパリンなどの薬物療法が行われることがあります。
2回流産した人が何の検査や治療もしないで、再度妊娠したときの出産率は80〜90%です。つまり、2回流産を経験した人の多くは偶然に胎児の染色体異常を繰り返しただけで、不育症である率はそこまで高くありません。
また、3回流産した人が何の検査や治療もしないで、再度妊娠したときの出産率は50〜60%です。3回流産後の4回目の妊娠となると、何もしないと出産できないと思う気持ちが強くなりますが、実際には半数は出産できています。
不育症の検査をしてもリスク因子が見つからない場合は多く、この場合は特に治療は行いませんが、次の妊娠が順調に進むことは多いのです。不育症の人全体を見ると、そのうち80%以上が元気な赤ちゃんを出産しているといわれています。
不育症の検査や治療については、自治体の助成を受けられる場合があります。検査を考えている場合は、自分が住む自治体のホームページなどを確認してみましょう。
(はぐふる内でも不育症検査の助成制度についてご紹介しています)
『参考資料』
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院