『子宮のがん( 子宮頸がん ・子宮体がん)』と妊孕性について【医師監修】

2023.09.20

3

【監修】EASE女性のクリニック:産婦人科専門医:丸山 真理子先生

子宮のがんには、がんができる場所によって、子宮頸がん(しきゅうけいがん)と子宮体がん(しきゅうたいがん)があり、原因も異なります。

 
がんは中高年の病気というイメージがあるかもしれませんが、子宮のがんの約7割を占める子宮頸がんは、20~30歳代が好発年齢です。
また、子宮体がんも40歳未満で発症することが珍しくありません。
 
子宮のがんの治療では、子宮を全部摘出すると妊娠は難しくなります。
しかし、がんができた場所や進行度によっては、妊孕性(にんようせい=妊娠できる力)を残せる場合があります。

子宮頸がんの原因は?

子宮頸がんは子宮の入り口の管状の部分にできるがんで、ほとんどの場合、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因とされています。

 
HPVは性的接触によって感染しますが、このウイルスは、性交経験がある女性の8割以上が生涯に1度は感染するといわれ、感染自体はごく普通のことです。
感染後、9割の人は免疫により自然にウイルスが消失しますが、消えずに感染が続いた場合、数年かけてがんに移行します。

子宮頸がんにかかりやすい年齢は?

子宮頸がんの発症は20歳代後半から増え始め、30歳代後半がピークとなっています。

子宮頸がんの初期症状は?

初期にはほとんど自覚症状がなく、多くの場合、子宮頸がん検診によって発見されます。

 

子宮頸がんが進行すると、不正出血や性交時の出血があったり、普段と違うおりものや粘液が出たりします。
下腹部や腰が痛くなったり血便・血尿が出たりすることもあります。

子宮体がんの原因は?

子宮体がんは、子宮体部の内側の子宮内膜に多く発生するがんです。

 
子宮体がんの原因として最も深く関わっているのは、エストロゲンという女性ホルモンです。
 
エストロゲンは、子宮内膜の発育を促す妊娠・出産に必須のホルモンですが、過剰に分泌されると子宮内膜増殖症(しきゅうないまくぞうしょくしょう)を引き起こし、これが子宮体がんのリスクを上昇させるとされています。
 
肥満や高血圧・糖尿病などの持病がある、出産経験がない、エストロゲン製剤によるホルモン療法を長期間受けているなどの人は特に注意が必要です。

子宮体がんにかかりやすい年齢は?

子宮体がんは閉経後に発症することが多く、50~60歳代が発症のピークです。

 
ただし、40歳未満で発症する人もいて、患者数は年々増加しています。

子宮体がんの初期症状は?

最も多い症状は不正出血です。

 
多くは早期の段階で不正出血を起こすので、月経ではない期間に出血があったり、おりものに血が混じったりしたらすぐに受診しましょう。
他に、排尿時や性交時に痛みがある、下腹部が痛む、おなかが張るなどの症状が出ることもあります

子宮のがんになっても妊娠できる?

子宮のがんの治療には、手術による切除、放射線療法、抗がん剤の3つがあり、これらを単独、または組み合わせて行います。

 
子宮のがんで妊孕性(妊娠する力)を温存するためには、子宮や卵巣、卵管を残すことが重要です。
治療はがんのステージ(進行度)や悪性度、身体の状態などを考慮して選択されますが、妊娠・出産を希望している場合、まずそのことを医師に伝え、妊孕性を温存した治療が可能かどうか、よく相談することが大事です。

子宮頸がんの治療と妊孕性

子宮頸がんでは、前がん病変である異形成(がんになる前の状態)の段階で小さな手術をして、子宮摘出が必要になる人を減らします。

 
前がん病変の高度異形成~上皮内がんでは、子宮を全て切除する必要はなく、がんがある子宮頸部のみを円錐状に切り取る「子宮頸部円錐切除術(しきゅうけいぶえんすいせつじょじゅつ)」を行って妊孕性を温存します。
 
また、ある程度進行した子宮頸がんの場合も、ステージ1A1期から1B1期までで、がんが子宮頸部にとどまっていて、なおかつ病変が4cm以内の状態であれば、子宮頸部と周辺のみを切除する「広汎子宮頸部切除術(こうはんしきゅうけいぶせつじょじゅつ)」を行うこともあります。

ただし、「広汎子宮頸部切除術」は将来の妊娠・出産を強く希望する場合に検討される治療で、がんの根治治療としては子宮の全摘が標準治療です。
妊孕性温存手術で子宮を残した場合、妊娠・出産は可能になりますが、手術後の再発や、早産・流産のリスクが高まったりします。

子宮体がんの治療と妊孕性

子宮体がんは、初期のステージであっても子宮や卵巣・卵管の摘出手術を行うことが一般的です。

 
しかし一定の条件を満たした場合に限っては、ホルモン剤による黄体ホルモン療法で妊孕性を温存することが可能です。
黄体ホルモン療法が適応となるのは、がんの広がりが子宮体部のみ・深さが子宮の筋肉の層の1/2未満の1A期で悪性度が低いこと、ホルモン剤が効きやすいがんであることが基本条件で、他にもさまざまな条件が検討されます。
 
また、黄体ホルモン療法は、いったんはがんが消えても再発のリスクが高いとされています。

まとめ

子宮のがんは、早期に発見して治療を行えば、比較的治りやすいがんです。

 
しかし、不正出血があったりおりものに異常があったりしたら、早めに受診しましょう。

特に子宮頸がんは自覚症状がない場合も多く、早期発見により妊孕性を残すことができます。
 
子宮がん検診は必ず定期的に受けることが大事です。
子宮のがんになっても、がんのステージやさまざまな条件が合えば妊孕性を温存することが可能です。
ただし、妊孕性を温存することによるリスクやデメリットも存在します。
 
そのことについて、医師にしっかりと相談し、十分に納得したうえで治療を開始するようにしましょう。

《 監修 》

  • 丸山 真理子(まるやま まりこ)産婦人科専門医

    EASE女性のクリニック院長。
    産婦人科専門医として子宮がん・乳がん検診のほかプレコンセプションケア、妊活、妊娠、子育てと全てのライフステージの女性診療に携わる。イーズファミリークリニック本八幡・病児・病後児保育室室長、EASE English Montessori School、日本女性財団プラットフォーム委員会委員長としても精力的に活動中。

     

    HP https://ease-clinic.jp/ EASE女性のクリニック

     
    丸山真理子先生の監修記事一覧(妊娠希望)
    📖妊娠希望に掲載中の記事

この記事は役に立ちましたか?

ありがとうございます!フィードバックが送信されました。