2023.02.03
1. 新生児黄疸 とはこんな病気
2. 新生児黄疸 の原因と症状
3. 新生児黄疸 の検査でわかること
4. 新生児黄疸 の治療法と薬
5. 新生児黄疸 のホームケアと予防
新生児黄疸(しんせいじおうだん)は、新生児(生後4週間未満)の期間に体内でビリルビン(赤血球中のヘモグロビンが壊れてできる色素)という物質が増えることで、全身の皮膚などが黄色っぽくなる状態です。
生後24時間を過ぎてから徐々に現れ、生後5日ころに最高値となります1) 。
その後、2週間くらいでうすくなっていきます。
全ての赤ちゃんに多かれ少なかれ見られる生理的な現象のため、症状の程度が軽ければ病気とはいえませんが、ビリルビンの数値が高い場合は治療の対象となり、光線療法などが行われます。
黄疸は、もともと血液中にあるビリルビンが増えてしまうことにより起こります。
ビリルビンは、血液に含まれる赤血球が役割を終えた際に、分解されてできる物質のことです。
そのビリルビンは血液に乗って肝臓に運ばれ、処理され体外に便として排出されます。
このサイクルは体内の自然な仕組みです。
胎内では母体でビリルビンの処理をしていますが、生まれてきた赤ちゃんは、今度は自分で代謝しなければなりません。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは体内の「化学工場」といわれる肝臓の処理能力がまだ低く、そのため、ビリルビンの処理が追い付かず、分解できずに血液中にたまってしまい、皮膚の色が黄色っぽくなります。
皮膚以外にも、白目の部分が黄色っぽくなることがあります。
新生児の90%以上に見られます1) 。
ビリルビンには間接ビリルビン(肝臓に運ばれる前)と直接ビリルビン(肝臓に運ばれた後)があります。
間接ビリルビンが増えるのが一般的な新生児黄疸で皮膚はみかん色になります。
一方、直接ビリルビンが上昇する時は、胆道系の異常が考えられます。
この場合、皮膚は緑色になり、便は白色からクリーム色になります。
ビリルビンを処理する量よりも分解する量が多い場合や、哺乳量が少ないことでビリルビンが腸肝循環を繰り返してしまい、便に出せない場合に黄疸が顕著になります。
早産児の場合は正期産時よりビリルビンが低い値でも治療基準となるので積極的に光線療法を行います。
新生児黄疸の検査には次のようなものがあります。
・ビリルビンの血中濃度を測る血液検査=どれくらいの値だったか、どれくらいのスピードで増えているかによって、治療が必要かどうかを判断する
・皮膚の黄疸を客観的に評価する「経皮的黄疸計」による測定
・音に対する脳の反応の検査(聴性脳幹反応)=ビリルビンが脳にまで悪さをしていないかを調べる
※この検査は聴覚スクリーニングをしてからです
・頭やお腹の超音波検査
新生児黄疸は生理的な現象ですが、むしろ積極的に治療をすることが大切です。
光線療法は効果があり、核黄疸という脳障害を予防するために行います。
光線療法は保育器の中で赤ちゃんの全身に特殊な光を当ててビリルビンを水に溶けやすくして、分解、排泄されるようにします。
光線を当てる時間は、約24時間です1) 。
光線療法を行ってもビリルビンの数値が下がらない時は、赤ちゃんから採血をして、その分を輸血して入れ替える「交換輸血」という治療が検討されます。
他の治療法として浣腸をして腸肝循環を予防する、ミルクを多く飲ませる等があります。
新生児黄疸は、生まれたばかりの時に生じますが、退院しても黄疸が続く場合もあり、注意が必要です。
次のような場合には、肝臓で処理されたビリルビンが通る胆道(たんどう)の病気のおそれがありますので、小児科に連絡しましょう。
1) 高橋尚人.産科と婦人科.89増刊号:14-18、2022
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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