2021.04.27
妊娠にかかわるホルモンには、いくつかの種類があります。それらのホルモンの分泌量の変化によって、排卵が起こったり、月経が起こったりします。ホルモンの分泌量が足りなくても、逆に多すぎても体のバランスが崩れてしまいます。適切な時期に適量のホルモン分泌があり、リズムが生まれることで排卵や月経が起こっているといえます。
月経開始から次の月経開始までの期間を「月経周期」といい、一般的に25〜38日(平均28日)が正常です。
月経が始まってから排卵までは卵胞を育てるホルモンが分泌されるので「卵胞期」や「低温期」といいます。
一方、排卵の後には、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くする黄体ホルモンが分泌されて体温が少し上昇するため、「黄体期」や「高温期」といいます。
このように低温期や高温期など、本来のホルモン分泌がさかんになる時期に、該当するホルモンの値を測るのです。月経開始から3日目ごろのホルモン値を基礎値といい、ホルモンのバランスの崩れをみるのに適しています。
また、卵管の検査や子宮の中をみる検査は、妊娠の可能性がない時期(低温期)に行います。月経周期に関係なく、いつでもできる検査もあります。
○血液検査
血液検査は、月経中、低温期、排卵時期、高温期に行います。それぞれの時期に応じて、適切な種類のホルモンが十分に分泌されているかどうかを調べます。
○超音波検査
超音波検査は、月経中、低温期、排卵時期、高温期に必要に応じて行います。月経中や低温期には卵胞の数や卵巣の様子を確認します。排卵時期には、卵胞の大きさや子宮内膜の厚さなどを確認します。高温期には、卵胞がなくなっているか(排卵したかどうか)などを確認します。
○子宮・卵管の検査(子宮卵管造影検査・子宮鏡検査など)
子宮や卵管の検査は、月経が終わってから排卵までの間(低温期)に行います。卵管の検査には、子宮卵管造影検査、通水検査、通気検査があります。また、必要に応じて子宮鏡検査を行うことがあります。
妊娠にかかわるホルモンについては、月経の時期に基礎値を測ります。そして、それぞれ適切な時期に、十分にホルモンが分泌されているかどうかを調べます。
[妊娠にかかわるホルモン]
・黄体化ホルモン(LH)
・卵胞刺激ホルモン(FSH)
・黄体ホルモン(プロゲステロン)
・エストロゲン
また、血液検査では、妊娠を妨げる要因となりうるホルモンや物質についても調べます。
・プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
プロラクチンは出産するとたくさん分泌されるホルモンで、妊娠・出産していないのにプロラクチンが過剰に分泌されると排卵が妨げられることがあります。
・甲状腺ホルモン検査
首にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、排卵が妨げられたり、流産(不育症)に影響したりすることがあります。
・クラミジア検査
性感染症のひとつで、そのまま放っておくと子宮から卵管へと感染が広がり、最終的にはおなかの中まで広がります。このクラミジアによる炎症で卵管が詰まることがあります。
・抗精子抗体検査
人間には外敵が体内に侵入したときに自らの体を守るシステムがあります。女性が抗精子抗体を持っていると、精子を異物ととらえて受け入れないことがあり、不妊の原因になることがあります。
・AMH検査
アンチミューラリアンホルモン(抗ミュラー管ホルモン)といって、卵巣にどれくらいの卵子が残っているかを知る目安になります。血液検査で調べることができます。
《 監修 》
洞下 由記(ほらげ ゆき) 産婦人科医
聖マリアンナ医科大学助教、大学病院産婦人科医長。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。
不妊治療をはじめ、患者さんの気持ちや環境を一緒に考えてくれる熱血ドクター。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療。
▶HP https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/ 聖マリアンナ医科大学病院