【産休・育休中】厚生年金の保険料免除は年金の額に影響する? 養育期間特例 の制度について【社労士監修】

2020.04.06

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妊娠中のお金

産休中と育休中は保険料が免除されるのはうれしいけれど…

産休中と育休中について、健康保険と厚生年金の保険料が免除されることはこちらの記事でお伝えしておりますが、
▶(産休・育休中の 社会保険料 について。社会保険料の申請が必要?

産休や育休を取ることによって、将来の年金額も減ってしまうのでは?という疑問を抱かれる方もいらっしゃるのではないかと思います。
今回は、その通な疑問にお答えいたします。

産休中と育休中は、将来の年金に与える影響は特にありません!!

結論から申し上げますと、保険料が免除されることによって、将来の年金額がその分減るということはありません。
厚生年金の保険料は、残業代や各種手当等を含んだ月額給与や賞与に応じて定められます。
本当にざっくりと、単純化して申し上げますと、加入期間が長いほど、保険料負担が多いほど、将来もらえる年金額が多くなります。

そして、産休・育休によって保険料負担が免除された期間については、保険料負担があったものとみなして扱われ、年金額の計算に組み込まれます。取りあえず安心ですね。

しかしながら、育児と厚生年金の関係は、これだけで終わりではなくもう一つ知っておきたいポイントがあるんです。

厚生年金の養育期間特例(養育期間標準報酬月額特例)について

厚生年金は、原則として保険料負担が多いほど、将来もらえる金額も多くなります

保険料負担は月額給与に応じて定まることを考えると、育児休業から復帰した後に時短勤務をし、給料がその分下がった場合は、保険料負担もそれに応じて下がることになり、そこについてはやっぱり将来の年金額に影響があるよね、という話にたどり着きます(制度が複雑なので詳しい説明は省きますが、給与が下がっても保険料が下がるのはすぐではなく、また、保険料が下がらない場合もあります)。

ここで、養育期間標準報酬月額特例という名前の制度が登場します。
以下、「養育期間特例」と略します。

養育期間特例は、子どもが3歳になるまでの間、子どもが生まれる前よりも保険料水準が低下したとしても、低下前の保険料水準に基づいて年金額を計算する制度です。
前述の時短勤務などによる不利益をなくすための措置なんですね。
厳密にいえば、保険料負担も減っているわけなので、この制度がなくても特段不利益が生じているわけではないのですが、制度がある以上は利用した方がいいでしょう。

時短勤務を想定している制度ではありますが、単に給与が下がった場合でも利用できます。

養育期間特例の手続き方法

では、この制度の手続き はどのように行うのでしょうか。
「養育期間標準報酬月額特例申出書」に、自身と子どもの氏名や生年月日等を記載し、勤務先に提出します。
勤務先から案内を受けられるとは限らないので、育児休業から復帰するときなどに人事労務系の部署に聞いてみましょう。
時効は2年ですが、忘れないように早めに手続しておくのがいいと思います。

 

手続するにあたっては、必要な添付書類があります。

住民票と戸籍謄本の原本が必要です。

あくまで「養育のために給料が下がってしまった方」を対象としていますので、住民票で同居の確認をします。
そして、戸籍謄本で続柄の確認を行うわけです。住民票で確認ができると勘違いしがちですが、住民票は「世帯主との関係」しか記載されないのです。

性別役割分業の考え方が薄れた現代においても、結婚して女性側の姓を使用するケースがごく少数にとどまっている流れで、世帯主は男性であることが大半です。
つまり、世帯主が父親である場合は、父と子の関係は確認できても、母と子の関係は確認できないのです。
親子である可能性が非常に高いとはいえますが、年金を分配するにあたって、特例的に給付額を多くするわけですから、そこは厳密に確認するということなのでしょうか。
住民票はともかく、戸籍謄本は本籍地が遠方にあるなどの場合は取り寄せるのに手間がかかりますので、養育期間特例の手続きを行わないという選択をする方もいます。
※母親が世帯主で、母親について養育期間特例を利用するなら、添付書類は住民票だけでOKです!

男性も養育期間特例の申し出ができます!

この養育期間特例ですが、男性も利用できます。
育児休業同様、父親が時短勤務をして、母親がバリバリ働いてもいいわけです。
まだまだ、そのような働き方が浸透しているとは言えない世の中ですが、諸事情で給与が下がることもありますし、転職することも考えられます。
この制度は、子どもが3歳未満 なら転職先でも利用できるのです。
転職先で、3歳未満の子どもがいるからと養育期間特例を案内されることは非常にまれと言えますので、自発的に人事労務系の担当部署に問い合わせてみましょう。

《 監修 》

  • 木幡 徹(こはた とおる)  社会保険労務士

    1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。ベンチャーでのIPO準備を経て、現在はM&Aに積極的な上場企業に在籍。企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。

    HP https://fe-labor-research.com/

     

     

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