【妊娠中の働き方】 母性健康管理指導事項連絡カード (母健連絡カード)の利用方法について【社労士監修】

2020.02.03

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妊娠中-働き方

時差出勤や休憩時間を増やしてほしいけれど…

妊娠中、母子の健康に気をつけながら働き続けるには、会社の配慮と理解が必須です。
男女雇用機会均等法とそれに基づく指針には、「母性健康管理措置」として、通勤ラッシュを避けるための時差出勤や休憩時間の延長、作業の制限など、会社が配慮すべきことが定められています。

といっても、会社の義務となるのは、妊婦健康診査などで医師から指導を受けた場合に、それに応じた配慮をすることです。
つまり、妊娠中である旨を告げているからといって、会社が自動的に休憩時間を増やしてくれるなどの配慮をしてくれるわけではありません。
産前休業や育児休業と同じく、会社に申し出ることが必要となってきます。

とはいえ、口頭のみで医師の指導内容を伝えるのは、なかなか難しいということもありますよね。具体的にどの程度の休憩時間が必要なのか、どういった作業がNGなのか。
正確に会社へ伝えるのは難しいかと思いますし、単純に言いにくいということもあると思います。

また、会社や同僚の「妊娠中の体調変化は個人差が大きい」ということへの理解がなく、社内の過去における妊娠者や周囲の妊娠経験者と比べて、「〇〇さんは平気だった」「本当にそこまでの配慮が必要なの?」と陰口をたたかれる不安もあります…。
そこで、母性健康管理指導事項連絡カードの登場です。

母性健康管理指導事項連絡カードを病院で発行してもらおう!

母性健康管理指導事項連絡カード(以下母健連絡カード)とは、医師が発行するもので、時差出勤や休憩時間の増加など、配慮の必要性を記載してあるものです。※2020年2月時点

ほとんどの母子手帳に様式が記載されていますし、下記URLでも様式例が確認できます。
※参考:厚生労働省リンク(女性労働者の母性健康管理のために

病院によっては、異なる様式を用意する場合もありますが、記載内容に大きな違いはありません。

母健連絡カードの発行には費用がかかる?

母健連絡カードの発行費用が掛かるかどうかは、病院によってまちまちです。
発行費用は1,000円~3,000円程度が多いようです。
無料の病院もあると聞きます。

 

妊娠中にみられる診断例としては「妊娠悪阻」「妊婦貧血」「切迫流産」「切迫早産」「妊娠糖尿病」「妊娠高血圧」「妊娠前からの持病の悪化」など
人によってさまざまです。

仕事の内容によっては、母体や胎児への影響について不安を感じることもあるかもしれません。

勤務につらさを感じている場合は、妊婦健康診査などの際に記入を依頼してみましょう。
 
医師から発行するかどうかを聞かれる場合もありますが、聞かれていない場合でも、遠慮せずに発行依頼をして全く問題ありません。

しかし、医師は医学的見地から記載を行うわけであって、患者に言われるがままに母子連絡カードを記載するわけではありません。
希望がそのまま通るわけではないということも、頭に入れておく必要があるといえます。
医学的見地から発行されるカードだからこそ、客観的な資料として会社に提出することができ、何かを言われる心配もなくなるというわけです。

会社の担当者が母健連絡カードを知らなかったら?

それなりに産休・育休者がいる会社であっても、人事や労務の担当者が母健連絡カードの存在を知らないということは結構あります。

母健連絡カードを提出するまでもなく、社員の申し出に基づいた配慮をしていたり、たまたまこれまで特段の配慮が必要な社員が出てこなかったりと、理由はいろいろ考えられますが、母健連絡カードの知名度は決して高くないのが現実です。

では、提出した母健連絡カードを見て「これは何ですか?」と言われた時、どのような対応を取ればいいのでしょうか。まず、医師が書いた、診断書のようなものだと伝えましょう。
そして、現在の勤務状況ではつらいということもハッキリと伝えましょう。通常は、それだけで配慮してもらえるはずです。

それでも、いぶかしげな目で見られた場合は、法律上会社が配慮する義務があると伝えるしかないのかな・・といったところです。
そこまで言ったにもかかわらず、全く配慮してもらえなかった場合、会社として、母健連絡カードの位置付けが不明なのであれば、労働局などの役所や顧問社労士に問い合わせるのが常識的対応と言えます。
そのようなことをせず、前例がないことや人手不足、または前述したような個人差が大きいことへの無理解から、社員の申し出を断るような企業であるとすれば、明らかにコンプライアンス意識の欠如したブラック企業といえます。

健康を第一に、母健連絡カードの通りに休憩を取るなどをしたうえで、労働局の雇用均等室や社労士などへの相談をし、将来的に退職することも視野に入れ、対応策を考えるのが得策といえます。

自分自身や子どもの健康より、大事な仕事など存在しないのですから。

 

《 監修 》

  • 木幡 徹(こはた とおる)  社会保険労務士

    1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。ベンチャーでのIPO準備を経て、現在はM&Aに積極的な上場企業に在籍。企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。

    HP https://fe-labor-research.com/

     

     

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