2025.01.07
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2001年にオランダの研究者が発見しました。
ヒトメタニューモウイルスは、非常に感染力が強く、くしゃみや咳による飛沫感染(ひまつかんせん)、ウイルスの付いた手や鼻水を拭いたタオルなどによる接触感染で広がります(図1)1) 。
感染は、生後3カ月ごろから始まり、2歳までに50%、10歳までに100%の子どもが少なくとも1回はかかるといわれています。
また、感染して治った後も十分な免疫が得られないため繰り返し感染しますが、感染する度に徐々に症状は弱くなります。流行の時期は、2月から6月にかけてです2) 。感染症を繰り返した時はヒトメタニューモウイルスの遺伝子のパターンが異なっているという報告もあります3) 。
図1 ヒトメタニューモウイルスの感染経路
ヒトメタニューモウイルスは、RSウイルスと関係が近いウイルスで、同じニューモウイルス科に分類されています。
症状も、RSウイルス感染症と似ていますが、発熱の期間が5~7日と、RSウイルス感染症より長くなります 2,4,5) 。
6カ月以下で感染した場合、下気道感染を起こしやすく、細気管支炎、クループ症候群、肺炎、喘息の悪化などのおそれがあります。
中耳炎を合併することも多いです。
胸部 X 線写真では気管支周囲の肥厚および肺の過膨張がみられます。上気道炎の場合は咳、鼻水、咽頭痛の症状もみられます。下気道感染は女児より男児に多かったとする報告があります6) 。
発熱は5~7日続き、咳や鼻水の症状が治まるまでに2~3週間かかります(図2)5) 。
ヒトメタニューモウイルス感染症が重症化すると細気管支炎や肺炎を起こし、入院が必要になることがあります。
特に乳児、免疫の低下している人、高齢者は重症化に注意が必要です。また、まれですが、新生児で無呼吸発作や脳炎を起こすおそれがあります1,2) 。
早産児、新生児慢性肺疾患、ダウン症などの基礎疾患を持っている場合は重症化しやすいので注意しましょう8,9) 。
図2 ヒトメタニューモウイルス感染症の主な症状とみられる時期
重症化しやすい6歳未満の乳幼児に対しては、専用の綿棒(鼻咽頭ぬぐい液/びいんとうぬぐいえき)で鼻の奥から鼻水を採取して、ウイルスの抗原の有無を調べる迅速検査(じんそくけんさ)が健康保険で行えます(保険適用)。
結果は15分程度で分かります1) 。
また、症状が強い場合には、薬による治療(薬物治療)が行われます。
薬物治療では、咳止め(鎮咳剤/ちんがいざい)や解熱剤、痰(たん)を吐き出しやすくする去痰剤(きょたんざい)、が使われます10) 。
表1 ヒトメタニューモウイルス感染症の予防法7)
ヒトメタニューモウイルス感染症の予防法 | |
・咳エチケット | ・咳やくしゃみが出ている時はマスクを着用する ・咳やくしゃみが出た時には咳エチケットを守り、ティッシュや服の袖で口や鼻を覆う |
・手洗い | ・石鹸と流水で20秒以上かけて洗う ・手洗いはこまめに行い、洗っていない手で目、鼻、口を触らないようにする |
・共用品の消毒 | ・共用品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、食器、タオルなど)は、アルコール、次亜塩素酸ナトリウムでこまめに消毒する |
ヒトメタニューモウイルス感染症では、以下を参考にケアをしましょう5) 。
(1) 食欲がない場合は、水分やお子さんの好きなものを与えます
(2) 呼吸が苦しそうな時には、背中をやさしくたたく、体を起こすように抱くようにします
(3) ぐったりしていなければ、入浴してもかまいません
(4) 以下のような場合には、もう一度診てもらいましょう
①胸やお腹をぺこぺこさせて息をしている時、②ゼイゼイ、ヒューヒューの音が強く息苦しそうな時、③咳き込みがひどく、眠れない時、④水分が摂れず、ぐったりしている時
感染したら何日間休むという日数は定められていません。
熱が下がって元気で、ゼイゼイなどの症状がなく、食事ができていれば、登園や登校は可能ですが、念のため主治医の先生にご相談ください。
《 監修 》
松井 潔(まつい きよし) 総合診療科医
神奈川県立こども医療センター総合診療科部長。愛媛大学卒業。
神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て2005年より現職。小児科専門医、小児神経専門医。
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