2025.01.30
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おいしくて健康にも良いとされる果物ですが、近年果物に対する子どものアレルギーが増えていて社会問題になりつつあります。
今回の記事では果物アレルギーの特徴と対応についてご紹介します。
なお「メロンは野菜?」といったような分類上の議論がありますが、この記事ではイチゴ、メロン、スイカも「果物」に含めます。
また日本学校保健会の学校を調査対象にしたアレルギー疾患に関する調査でも、食物アレルギーの原因食物として、果物は卵に次いで2位でした。
1つ目は卵や牛乳のアレルギーと同じように乳幼児期に発症し、成長とともに食べられるようになることが多いタイプです。
このタイプはバナナに対するアレルギーが多いです。
2つ目のタイプは、特定の花粉にさらされてアレルギーを発症する準備状態となり、その花粉と似た成分をもつ果物にアレルギーを起こす(交差反応)タイプです。
このタイプは花粉-食物アレルギー症候群と呼ばれています(表 参照)。
症状は、生の果物を食べた後にくちびるや口の中の腫れ、のどのイガイガなど口周辺に限定した症状が出るので、口腔アレルギー症候群といわれます。
口周辺に限定した症状が出るのは、果物アレルギーを起こす果物の成分が、熱や消化酵素に対して弱く変性しやすいためと考えられています。
ただし、時に口の症状に続いて、鼻や目の症状、じんましんや呼吸苦などの全身のアレルギー症状が起こり、まれにアナフィラキシーショックを起こす場合もあります。
交差反応を起こすアレルゲンは、植物の生存に必要なものであるため、多くの果物に含まれます。
そのため花粉-食物アレルギー症候群を発症すると、ほかの果物にも症状が出やすくなるという特徴があります。
なお花粉症の原因として多いスギ花粉もトマトとの交差反応が報告されていますが、トマトアレルギーの発症はまれです。
表:花粉-食物アレルギー症候群に関与する代表的な花粉と食物
花粉 | 食物 |
カバノキ科(シラカンバ、ハンノキなど) | バラ科(リンゴ、モモ、サクランボ、イチゴなど)、マメ科(大豆、緑豆もやし) |
イネ科(カモガヤなど) | ウリ科(メロン、スイカ)、マタタビ科(キウイ)、ミカン科(オレンジ)など |
キク科(ヨモギ) | セリ科(セロリ、スパイス類など) |
キク科(ブタクサ) | ウリ科(メロン、スイカ)、バショウ科(バナナ) |
花粉ではないが、ラテックス(ゴム製品)の成分とバナナ、アボカド、クリ、キウイの間にも交差反応が知られており、ラテックス-フルーツ症候群と呼ばれています。
ただし果物の詳しい成分(コンポーネント)に対する血液検査は、有効なこともあります。血液検査よりも信頼性が高い検査は皮膚テスト(プリックテスト)であり、直接アレルギー検査用の鈍い針を果物に刺してから皮膚に押し付けて、皮膚の反応をみます。
また医療体制が整った施設では、直接疑わしい果物を摂取して反応をみる食物負荷試験も行われます。
ただし全身症状やアナフィラキシーを起こすこともあるため、疑わしい場合はアレルギーを専門とする医師に相談しておくと安心です。
『参考文献』
一般社団法人日本小児アレルギー学会.食物アレルギー診療ガイドライン2021. 協和企画, 2021
福家辰樹. アレルゲン 野菜・果物. 日本小児アレルギー学会誌 2020;34(5): 602-611
今井孝成ら. 消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」平成29(2017)年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告. アレルギー 2020;69(8):701-705
日本学校保健会.令和4 年度アレルギー疾患に関する調査報告書P18(2024年5月閲覧:https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_R050020/index_h5.html)
《執筆・監修》
小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医
防衛医科大学校卒業。
山梨大学大学院 総合研究部医学域
小児科専門医・アレルギー専門医・社会医学系指導医
専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健
保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。
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