はぐふる

育む8つの視点健育

触れ合うことで育む心身の健康

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出生直後から始める母と子の触れ合いの重要性

子宮の中の赤ちゃんは、約40週もの間、温かい羊水と柔らかい壁に包まれ、お母さんやお父さんの声を聞きながら暮らしています。子宮の中は無菌状態で、栄養も酸素も臍帯(さいたい)を通して供給されています。その赤ちゃんが、出生の時を迎えるとお母さんの陣痛によって押し出され、空気のある世界に生まれ出てきます。赤ちゃんは一世一代の生死をかけた試練をくぐり抜け、やっとの思いで無事にお母さんのもとにやって来るのです。出産とは、新しい家族が増えることです。では、その新しい家族の一員を最初に迎える場所は、いったいどこがよいのでしょうか。また、赤ちゃんはどのようにしてほしいと思っているのでしょうか。

きっとお母さんの温かく柔らかい身体に抱かれ、聞きなれた声を聞いて安心し、これまでは胎盤を通じて24時間絶えることなく供給されていた栄養を自分で獲得するために、乳房の近くでいつでもおっぱいを飲めるようにしてほしいと思うでしょう。この時期の赤ちゃんには、身体が丸ごと包み込まれるように抱っこされる体験が必要です。これは母親によるholding(抱きかかえること)が、自己の生成と統合を支える基盤になるという心理的な作用ばかりではなく、体温を適温に保ち、ホルモンの分泌を促すという身体的な作用もあります。また、十分な皮膚接触を通して母親の正常細菌そうを受け取り、母乳を通して、免疫や感染防御、栄養、成長などに必要な様々な物質を受け取ります。

このようなお母さんとの身体的接触によって、安心感と親密さが増します。その後、さほど集中的に触れられることがなくても、その子が幼いころに温かく愛情を込めて触れられた体験は、後に信頼関係や結びつきを伴う人間関係を築いていくことに役立ちます。まずは人間としての安心感を味わい、心の健康を保つための基礎を培うためにも、出生直後から十分に赤ちゃんとの肌の触れ合いを行いましょう。

 

心の健康の基本、安心感を育むオキシトシンのプレゼント

愛情の込もった皮膚刺激は、安らぎと結びつくシステムを活性化し、幸福感をもたらします。この効果は、ストレスや危機に遭った時ほどすぐには表れませんが、長く持続します。母乳による育児は、母乳の排出を促進するプロラクチンの分泌を高めることによって、母乳の産生を促します。そして母乳を吸っている子どもを温められるように母親の体温も上昇し、血圧とストレスホルモンが下がります。幼いころにたくさん抱きしめられた子どもは、大人になってもオキシトシンが出やすいことも分かっています。子育てに大切なのは、発達の順番に沿って育てていくことです。身体→感覚→感情→頭の順に、まずは様々な体験を豊かに感じられる身体を育み、その次にしなやかな感性を持った心を育てることで、頭も発達します。五感が発達する順序を見ても、触覚(皮膚感覚)→味覚→嗅覚→聴覚→視覚の順に発達します。また、触覚(皮膚感覚)は一生衰えないといわれています。

 

皮膚というのは、「露出した脳」とも呼ばれるくらい、最近の研究では脳と同じ物質が含まれていることが分かってきました。スキンシップについては、抱き癖がつく、子どもを依存的にするなどの誤解も多いようです。しかし、スキンシップは子どもを甘えさせることであって、甘やかす(先回りして親がやってしまう)こととは別のものです。それについては様々な研究がされており、母親がしっかりとスキンシップを取っていたり抱っこしたりしている子ほど、情緒が安定している傾向があり、自立心も育まれやすいといわれています。

オキシトシンというホルモンは、産後のママの子宮収縮や、おっぱいの奥の筋肉を収縮させて母乳を乳首の方へ押し出させる役割を持っている、なじみのあるホルモンです。それだけでなく、子どもの記憶力やストレス耐性を高める作用もあります。幼少期にスキンシップやマッサージをすることで、脳に神経回路が作られ、身体から分泌されます。何かを獲得することで得られるドーパミン的な幸福感ではなく、人々の間に生まれる心の絆や信頼感などによる真の幸福感が、オキシトシンによって得られます。それに伴ってセロトニンの効果も増幅され、心と身体の機能が安定し、自然治癒力も高まるといわれています。

監修者:株式会社マイユティックス 代表取締役 濵脇文子